日本航空の経営再建は「政府支援」の大号令こそ打ち出されたものの、具体策を確定できず混迷が続く。その中で日航との資本・業務提携をめぐる米航空大手アメリカン航空とデルタ航空の舌戦だけが激化している。
両陣営が表明した支援額はともに10億ドルを突破した。日航は近く、提携先を選定した上、助力を仰ぐ企業再生支援機構に報告。支援機構はこの提携も含む経営問題を評価して年明けにも支援の可否を決定するとみられる。
日航再建をめぐり、国内では日本政策投資銀行をはじめ、3メガバンクなどの取引金融機関が無条件での支援・債権放棄に難色を示す。金融機関だけではなく、2008年に優先株を引き受けた大手商社も「誠意ある再建策が出なかった」と冷ややかだ。
そんな日航に対して、なぜ、海外の航空2社は熱視線を注ぐのだろうか。
覇権争いのかなめ石
その答えは、日航が世界の航空連合の覇権争いを左右するかなめ石になっていたことにある。
デルタ陣営とアメリカン陣営の争いが表面化したのは9月。まず、デルタが日航に対し、資本支援とデルタ主導の航空連合「スカイチーム」への移籍を提案した。もともと日航はアメリカン航空が率いる航空連合「ワンワールド」に加盟しており、デルタの提案は「アメリカンに致命的なダメージを与えかねない」(航空関係者)内容だった。
2008年7月~09年6月の日米間路線需要を見ると、日航を抱えるワンワールド(アメリカン航空陣営)のシェアは35%、スカイチーム(デルタ航空陣営)とスターアライアンスはそれぞれ31%で均衡している。
だが、このデータを元に、日航がスカイチームに移籍した場合を単純合算すると、スカイチームのシェアは6割まで拡大する半面、ワンワールドのシェアは1割まで縮小してしまう。スカイチームは3陣営の中で唯一、日本の航空会社がメンバーとなっておらず、日航を自陣に引き込めれば、絶大な効果を得られる見通しだ。
深刻な経営危機に陥った日航だが「羽田空港の国際化が進めば、海外の航空会社にとって日航が持つ発着枠は魅力的」(国土交通省幹部)。デルタ航空にとっては「日航と重複が多い日米路線について共同運航を増やせば、互いに多くのコストを削減でき、アジア路線を共同開拓する余力を持てる」(幹部)。