前体制からのとんだ置き土産が時限爆弾になるかも?

 「脱官僚支配」を旗印とする民主党連立政権の下で、元大蔵次官の斎藤次郎が民営・日本郵政の社長に就任した。民主党幹事長の小沢一郎との親密さゆえに、次官辞任後は不遇をかこち、「10年に1人の大物」としては地味なポストを渡り歩いた。社長就任が内定した日、待ち受ける報道陣の前に現れた斎藤は満面の笑みを浮かべ、第一線への復帰の喜びを隠すことはなかった。(文中敬称略)

 しかし、前体制から引き継いだ「負の遺産」が、船出したばかりの斎藤丸の時限爆弾となるかもしれない。前専務執行役員の横山邦男ら、前社長の西川善文が三井住友銀行から連れてきた「チーム西川」が独断で進めてきた日本通運「ペリカン便」と郵便事業会社「ゆうパック」との統合問題がとんだ置き土産となっているのだ。

グループの足をひっぱる宅配便事業

 日本郵政グループは11月25日、2009年4~9月期連結決算を発表した。株式市場の回復で、ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の資金運用が好調に推移し、民間企業の最終利益に当たる連結中間純利益は2009億円を確保したものの、前年同期比では215億円減益となった。減益の最大の要因が、日本郵便(郵便事業会社)が日通と合弁で設立した宅配便子会社「JPエクスプレス」(JPEX)の存在だ。

2007年10月の郵政民営化直後に華々しく「ゆうパック」「ペリカン便」の統合計画を打ち出したものの、総務相から事業統合の認可を得られぬ まま日本郵政を去った

 JPEXは2008年6月2日に、日本郵便66%、日通34%の出資比率で設立、日通のペリカン便事業を継承して2009年4月1日に事業開始。さらに、09年10月1日付で日本郵便のゆうパック事業を統合し、お歳暮シーズンの需要獲得に備えるはずだった。ところが、前総務相の佐藤勉は「計画は実現性、具体性を欠く不十分なもの」として認可せず、西川在任中の事業統合は実現しなかった。

 10月の事業統合を前提とした事業計画ですら、JPEXは通年で190億円の赤字を計上する見通しだった。ところが、4月の発足から半年で既に250億円の赤字が発生、3分の1の株式を持つ日本郵政の損失は約160億円に膨らんだ。その上、統合が宙に浮いたままでは・・・この先、いったいどうなるのか? 日本郵政は通期純利益見通しをほぼ前期並みの4300億円と発表したが、JPEXの累積赤字分はいっさい含まれていない。上場企業ではあり得ない決算なのだ。