死の商人。
武器を売ることが結果的に殺人への加担になり、それをビジネスにする邪悪性がこの表現の真意である。
戦争回避のはずが実態は「死の商人」
米国のバラク・オバマ大統領はこの言葉とは対極に位置していると思われるが、その担ぎ役であったならばどうだろうか。
市民活動からスタートした政治家が死の商人というレッテルを貼られること事態、ゆゆしきことである。戦争という現実を最大限の努力で回避することこそ、オバマ大統領の政治姿勢であったはずだ。
今回、ここで陰謀論を弄するつもりはない。オバマ氏が極秘に国外へ武器を売却し、利益を個人口座に振り込ませていたわけではない。しかし、大々的に喧伝されていない分だけ、オバマ政権による他国への武器輸出増加の流れが強くなっているのは事実である。
それは不況時に誰もが考えつくビジネスモデルの1つでもある。他国に武器を売り、低迷した米国経済を少しでも上向かせ、雇用を創出させる。
それが武器ビジネスであっても、である。死の商人というレッテルが本当に相応しいのであれば、オバマ氏の倫理感が崩れたということだ。
大統領は2010年7月、政権内に「輸出評議会」という諮問組織を作った。輸出を今後5年で2倍にし、米国経済を活性化させようという目的がある。輸出が増えれば国内の生産性が上がり、必然的に雇用も回復する。単純なマクロ経済の論理ではそうなる。
サウジアラビアに売った時代遅れの兵器、600億ドル分
同評議会の議長にボーイングのCEOジム・マクナーニー氏を抜擢したところから話は怪しくなる。2カ月後の9月、ウォールストリート・ジャーナルがスクープ記事を掲載した。
ホワイトハウスはサウジアラビアに600億ドル(約4兆6000億円)相当の武器売却を計画しているというものだった。大統領は連邦議会にこの売買の承認を訴えた。600億ドルという金額は10年間の契約額だが、1国に対する武器輸出としては最大級である。
しかもサウジに売る武器は、84機の「F15戦闘機」と「AH-64Dアパッチ・ロングボウ」と言われる攻撃型ヘリコプター175機で、両機ともボーイングが製造している。マクナーニー氏が輸出評議会の議長だからなのか、サウジ側が両機を求めてきたのか定かではない。
なぜ今、F15を大量納入しようというのか。というのも、同機はすでに時代遅れの戦闘機としての印象が強い。ファイタージェット分野はすでにF35の時代に突入している。