「日本人の働くところはなくなる」が、冗談でも戯れ言でもなくなってきている。
止まらない円高で日本企業が拠点を海外に移す傾向に拍車がかかり、日本国内の「空洞化」は避けられない状況である。発足したばかりの野田佳彦内閣は、9月4日に経済4閣僚の初会合を開き、企業の国内立地を促す補助金の拡充や、中小企業への長期資金の供給など空洞化対策の検討に入ることを確認した。
しかし2010年10月には、菅政権の下で経済産業大臣を議長として、政府、政府関係団体、中小企業団体、金融機関といった支援機関が参加する「中小企業海外展開支援会議」が設置されている。この時点でさえ、「中小企業が海外に出ていくのはやむなし」と判断されていたわけだ。
円高が加速している中では、こうした支援策がさらに求められてくるはずだ。政府としては、空洞化阻止を口にする一方で企業の海外進出を積極的に支援するという矛盾したことをやらなければならない苦しい立場に立たされている。
ともかく、日本の企業は海外に出ていく。当然、国内の雇用は減ることになる。現状でさえ雇用環境は悪化しているというのに、ますます酷いことになろうとしているわけだ。
OJTで育てられた日本人は海外で仕事ができない
こうした状況に、「日本人も海外に出るべきだ」という論調を展開する人たちがいる。「日本で仕事がないと不満を言っていないで、海外で仕事を探しなさい」というわけだ。正論である。正論ではあるが、「言うは易く行うは難し」である。
一大決心をして海外に出ていったとしても、そうそう簡単に日本人が仕事を得ることはできない。それができるなら、すでに海外に展開している日本企業も、もっと日本人従業員の数を増やしているはずである。
しかし現実は、現地での日本人従業員の数は最小限に抑えられている。必要とされているが希望者が少ない、というのも現実だ。