「これから行っていいですか?」

 携帯電話の向こうから、快活な声が聞こえてきた。私のビジネス仲間の中では一番若い経営者である。今、中目黒にいるという。

 ある会合で知り合いになり、その後、いろいろな会合でもよく出会うようになった。とにかく行動範囲が広い。フェイスブックを、日本に上陸する数年前から使っており、全世界に友人がいるという。

 彼の会社の事業は、高級輸入車のカスタマイズである。最近、中国の富裕層向けの自動車販売も始めている。ふだんから「電車に乗るより飛行機に乗る回数の方が多い」と豪語するほど海外を飛び回っている。国内に引きこもりがちな最近の日本の若者と違い、海外でも自らルートを開拓して会社を大きくしている。

中国で普及し始めた「クリーニング」

 彼は「システム」のことで相談があるという。かなり急いでいる様子だ。一体何の話だろうと考えていたら、ほどなく彼が来社した。

 話の内容は意外なものだった。クリーニング店の「トレーサビリティー」のシステムを構築できないかというのだ。

 なぜ、クリーニング店なのか? 聞いてみると、今、中国ではあらゆる商品やサービスが高級化しているそうだ。その流れの中で、衣服もクリーニングする時代が到来した。クリーニング代は、日本とほとんど変わらないという。まさに中国の富裕層向けのサービスなのだ。

 彼は大きな「ビジネスチャンス」を発見し、中国でのクリーニング店の展開に着手した。現在はまだ上海で3店舗だけだが、できるだけ早く50店舗にまで拡張したいという。

 だが、中国でのクリーニングビジネスには、大きな問題があった。