久しぶりに韓国人の知人とソウル市内のなじみの店に冷麺を食べに行って、2人ともため息をついた。1人前の価格が9000ウォン(1円=13ウォン)。サラリーマンの昼食といったら、つい2~3年前まで5000ウォン以下というのが相場だった。
デフレの日本での生活に慣れてしばらく忘れていたが、モノやサービスの価格はどんどん上がっている。
もう「インフレ」と呼べる物価高
2011年9月1日に、韓国の統計庁は8月の消費者物価が前年同期比5.3%上昇したと発表した。4月に消費者物価上昇率が前年同期比4.2%になって以来、4カ月連続して4%台の高い伸びを続けてきたが、8月はついに5%台に達してしまった。
ここまでくると、もうインフレと言ってもいいほどの物価高だ。
コーヒー代、タバコ代のほか、スーパーに行くと、野菜、肉、牛乳、飲料、日用品、さらに飲食店の価格が、異常なペースで上昇している。
それだけではない。不動産賃貸価格も急騰を続けている。
韓国では、2011年に入ってからアパート(日本で言うマンション)の売買価格は下落に転じている。ソウル郊外などでは、新規分譲をしても大量の売れ残りが出る例も続出している。交通の便が悪い物件や郊外のニュータウンでは価格が大幅に下がっている例も目につき始めた。
ただ、ソウルで人気の高い地域の価格は高止まったままだ。100平方メートル規模のアパートの価格は10億ウォンを超える物件がざら。富裕層が住む150平方メートル以上の物件になると20億ウォンを超える物件も珍しくない。最近、こうした地域の不動産屋を何件か回って話を聞いたが「2~3年前から売買価格はほとんど変わらない」という声が多い。
手が届かない不動産、購入をあきらめても賃貸料が高い
あまりに高値で手が出ない層が急増しており、売買に比べて賃貸に回る比率が高まっている。この賃貸料が2011年に入って急騰して、最近社会問題にもなっている。
韓国では毎月家賃を払う方式よりも、2年契約であらかじめ一定の金額を家主に払い、契約が終わると全額を返却してもらう「チョンセ」という方式が一般的だ。この間、居住者は管理費を払うだけで家賃は生じない。家主は、一時金で受け取ったカネを自分で運用するか、別の不動産を買うかして、家賃分を稼ぐ仕組みだ。