ナショナル・キャリア日本航空の再建問題は迷走が続いている。10月末、前原誠司国土交通相は、政府を挙げて支援する方針を強調した上で、日航に対しては官民ファンドの「企業再生支援機構」の活用を指示した。
しかし、永田町・霞が関には、公的資金投入へのためらいが根強いうえに、実績作りに色めきたつ支援機構への不信感もある。政府管理化での再建というシナリオも、決して、盤石とは言えない。
権限なきタスクフォースに耳を傾ける者なし
混乱に拍車をかけたのは、実は、前原国交相だった。
9月下旬、前原氏は再生ビジネスの専門家5人で構成する「JAL再生タスクフォース」を日航に送り込んだ。彼らに与えられたミッションは、外部の視点から資産を査定し、新たな再建計画策定に向けて日航に助言すること。日航が独自に立てた再建計画を前原氏自身が「実現性不十分」として撤回させた直後の政治決断だった。
しかしタスクフォースは政府としての正式な手続きを踏まず、前原氏の一存で選ばれたチームに過ぎなかった。民間企業に介入する法的な設置・活動根拠を持たない組織に、誰が、本気で耳を傾けるだろうか。
タスクフォースは最多時には弁護士やコンサルタントなど100人規模の外部スタッフを呼び込んで再建戦略を練り上げたが、排除された日航経営陣や国交省からの反発は強まった。さらに10月中旬以降、タスクフォースが再建計画の中間報告をまとめ、利害関係者に示し始めると、批判の渦は一層広まることになる。
中間報告で示された計画は「債権放棄を含む2500億円規模の金融支援」「公的資金を伴う3000億円規模の資本増強」「OBへの年金一括支給などにより、企業年金の積み立て不足を3300億円から1000億円まで圧縮する」――などが柱。
日本政策投資銀行や、みずほコーポレート銀行など主要取引銀行は「従業員・OBに比べて、金融機関の痛みが大きすぎる」などと債権放棄を激しく批判。財務省も「年金救済に公的資金が投入されるように見え、国民の理解を得られない」と反対の姿勢を鮮明にした。