11月3~4日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文は、フェデラルファンド翌日物金利の誘導レンジを年0~0.25%で据え置くとともに、「より長い期間(for an extended period)」という表現の現行「時間軸」に修正を加えなかった。英米有力紙がこの「時間軸」の表現修正を米連邦準備理事会(FRB)が検討し始めたと報じていたが、現段階では議論が煮詰まっていないものと推測される(今回の決定は全員一致)。何らかの議論が行われていたとしても、その内容が判明するのは、議事録が3週間後に公表されてからということになる。

 重要なのは、今回の声明文で、超低金利政策の長期化が許容されるとFOMCが判断している経済状況面の根拠が具体的に3つ、明示されたことである。それらは、(1)「資源利用率の低さ(low rates of resource utilization)」、(2)「抑制されたインフレ率のトレンド(subdued inflation trends)」、(3)「安定したインフレ期待(stable inflation expectations)」。

 (1)は、設備稼働率の低さや失業率の高さと言い換えてもよいだろう。(2)は、コア個人消費支出(PCE)デフレーターが前年同月比+1%台前半へとプラス幅を縮小してきている事実を指している。そして(3)は、消費者を対象とする期待インフレ率調査や、通常の固定利付債とインフレ連動債のスプレッドが示す、市場が抱いている期待インフレ率などを総合的に判断した結果であろう。

 「時間軸」についての具体的な説明が付加された、あるいは超低金利が継続されるための具体的な条件が明示されたということは、それらの条件に変化が生じていない間は、市場が超低金利継続を安心して見込めるという効果が期待できるということである。FOMC内のタカ派からの発言を抑制する効果も期待できる。

 しかし一方、上記(1)~(3)のいずれかに今後、トレンドの変化が生じる場合には、債券市場の動揺が一気に強まりかねないというリスクもはらんでいることには注意が必要である。