(中国用注意事項から引用)
中国の諜報活動はロシアのそれとは大きく異なる。中国人は情報(information)と諜報(intelligence)を区別しない。中国の情報に対する食欲は広範かつ無差別であるが、これは、特に科学技術分野において顕著である。
中国の諜報機関はエージェントを使わずに、友人をつくる。もちろん、中国には軍事、非軍事を問わずプロの諜報員が存在するが、彼らは様々な諜報収集機関の命令によって動く中国人の一般学生、ビジネスマン、中国内外国企業支店のローカルスタッフなどの裏に隠れている。
英ガーディアン紙は今年10月14日、イタリアの独裁者ベニト・ムソリーニが一時期、英国のスパイとして働いていたと伝えた。英ケンブリッジ大の歴史家ピーター・マートランド氏の研究で明らかになったという〔AFPBB News〕
「information=情報」とは十分な分析を経ていない生の知識に過ぎないが、「intelligence=諜報」とは、これらの雑多な情報の中から専門家による分析を経て間違いないと判断された選りすぐりの情報のみを指す。
要するに、英諜報関係者が見た中露の違いはこうだ。ロシアの諜報機関は「information」よりも「intelligence」を重視し、プロの諜報部員が確度の高い情報を持っていそうな外国人を直接「一本釣り」しようとする。
これに対し、中国の諜報機関は「information」か「intelligence」かを問わず何にでも関心があるためか、プロの諜報部員よりも素人の一般中国人を前面に出し、間接的にターゲットから情報を得ようとする傾向があるというのである。
「information」と「intelligence」を区別するどころか、両者の違いすら十分理解されず、諜報機関など非合法活動をする悪い組織だと考えられている日本では説明が難しいのだが、これが中国とロシアの諜報活動の実態である。
次回は、この興味深い英国防省の防諜マニュアルが描く中露諜報機関の実態をより詳しくご紹介したい。