9月の半ば、今年も年に1度の定期便が我が家に届いた。丁寧に梱包された箱には「平成21年 ヒゲタ醤油謹製」の文字。中には陶器をイメージした白いビンが入っている。

箱を開けると、陶器のような白いビンが現れる

 千葉県銚子市に工場を持つヒゲタ醤油が、1年に1度だけ限定で醸造し、通販のみで販売している江戸造り醤油「玄蕃蔵」だ。

 5月に予約をして、まだかまだかと待つこと約4カ月。今年もやっとお目にかかれた。

 まずはいつもそうするように、白い器に注いでみる。赤く澄んだ色と鼻腔をくすぐる香り。「今年もいい出来だー」とひとりほくそ笑む。

 届いたその日の食卓には、毎年、冷奴が登場するのも我が家の定番だ。玄蕃蔵は、豆腐の色を汚さず、シンプルな素材の良さをより引き出してくれる。生醤油の何たるかを教えてくれるようだ。

味は非常にマイルド。ふだん使っている醤油に比べると、すべてがやわらかい

 玄蕃蔵に初めて出合ったのは、数年前のこと。封を開けて、まず上品で深い香りに驚いた。色は濃すぎず、味は非常にマイルド。普段何気なく使っている醤油に比べると、すべてがやわらかくて、特に冷奴やお浸しなど繊細な味の料理に使うと、違いが歴然としていた。

 すぐさま、お取り寄せの定番になったのは言うでもない。500ミリリットルで1800円(税込み、送料込み)という値段は、一般的な醤油に比べると格段に高い。だが、1992年の一般への販売開始以来、根強いファンがいて、毎年3万5000本の限定数は予約のみで達してしまうという。