――前回、片頭痛の発作にはトリプタンが劇的に効くという話をお聞きしましたが、そもそも頭痛そのものを起こしにくくすることはできないのでしょうか?

大和田 大事なことです。それこそが、私たち専門医がやるべきことです。そして、それは可能なのです。

片頭痛を悪化させると変容性片頭痛になる

片頭痛持ちは乳がんリスクが30%減少、米研究チーム

米国の癌学会誌によると、片頭痛持ちは乳がんにかかるリスクが30%低くなるという。頭は痛いがこれは朗報?〔AFPBB News

――どんなことをするのですか?

大和田 それを説明する前に、まず、変容性片頭痛について触れておきます。片頭痛については前回お話ししましたが、片頭痛を正しく治療しないと、痛みが永続的に続くようになります。

――それは、なぜですか?

大和田 片頭痛は、一部の脳の活性が高まり、そこにつながる血管が異常拡張して、痛みが生じるということをお話ししましたが、適切な治療を行わないと、血管の異常拡張がさらに脳の活性をもたらし、それが再び血管の異常拡張へとつながります。

 つまり、悪循環が終わらなくなるのです。それによって常に片頭痛がある状態になります。また、血管の拡張が繰り返されると、血管自体に炎症やむくみが残って、さらに頭痛を起こしやすくなります。これが変容性片頭痛です。

――患者さんは辛いでしょうね?

大和田 辛いです。片頭痛が起きるたびに、市販薬で一時的に痛みを抑えることを繰り返していたところ、やがてそれが効かなくなり、さらに量が増えて常用するようになる。すると、胃の調子も悪くなり、不安も増す。常に頭が痛いから、仕事にも集中できない、私生活も楽しめなくなります。

脳と血管の状態を改善する方法

――治療法は、どのようなものですか?

大和田 まず大事なことは、片頭痛が起きた時に、適切な治療をすることです。前回お話ししたように片頭痛の特効薬があるので、それを服用して血管の拡張を元に戻すことが大事です。これによって、悪循環の流れをいったん断ち切ります。

 1つの片頭痛発作に正しく対応すると、次の発作を起こしにくくなります。これは「ペインフリーの法則」と呼ばれているもので、脳と脳血管を正常な状態に保つことによって、自己治癒能力を高めるわけです。そして次に、その人に適した予防薬を投与します。