10月30日に発表される日銀「展望レポート」の内容で、債券市場が最も注目しているのは、今回新たに発表される2011年度についての消費者物価指数(CPI)コアの政策委員大勢見通し(中央値)がどのくらいの幅でマイナスになるか、という点だろう。プラスではなくマイナスの数字になるだろうということは、多くの市場参加者がすでに念頭に置いているように思われる。
ここでは、金融政策をつかさどる日銀が置かれている立場から、物事を考えてみよう。
仮に、CPIコアのマイナス幅が先の年度にかけて拡大一辺倒で推移していくような見通し数値の並びになっていると、「日銀はデフレを放置するつもりなのか?」といった批判の声を招きかねない。足元の状況は悪いとしても先行きは(=いずれは)景気が改善していくだろうという、各国政策当局が前提にするのが常であるシナリオの大枠と、そこから導き出される需給ギャップ縮小、物価下押し圧力減退というロジックを持ち出さずとも、CPIの数字は先行き上向きになるだろうと市場参加者の側が推測することは、十分可能である。
2005年4月以降、「展望レポート」は4月分、10月分ともに、当年度及び翌年度の2年分の政策委員大勢見通しが公表されるようになった。2008年7月からは中間評価でも政策委員大勢見通しが公表されるようになった。同年10月の展望レポートからは、毎年10月時点で翌々年度も含む3年分の見通しが公表されるようになった。こうした日銀からの情報発信充実の経緯も踏まえつつ、2005年度以降の「展望レポート」および中間評価について、実際に過去のCPI予測数値の並びがどうだったかを振り返ってみると、上記の考察を裏付ける結果が示される。
図表を見てすぐ分かるのは、一番先の年度(2年間の予測の場合は翌年度、3年間の予測の場合は翌々年度)のCPIコアの数字がその前の年度よりも高くなっているケースが多い、ということである。