「アラブの春」の民衆蜂起に始まった2011年は、独裁政権下のアラブ諸国ばかりか、欧州、アジア、アフリカ・・・と世界中至る所でデモ風景に遭遇する混乱の年となった。そして、8月。ロンドン中心街でも、黒人男性が警官に射殺されたことに端を発し、デモが発生した。

格差社会の不満が爆発した英国の暴動

ロンドン市内

 ところが、この先進民主主義国家英国での平和的抗議行動は無軌道な暴動へと発展、暴徒と化した民衆は略奪や放火を繰り返し、多くの逮捕者と甚大な経済的損害を出す結果となってしまった。

 これまで、英国でも暴動はたびたび起きてきた。その原因としては、まずは失業、そして階級社会、人種差別、格差社会といったことへの不満が爆発したということがいつも語られていた。

 しかし、今回の暴動参加者の政治的社会的背景は多岐に渡り、一元的に理由づけすることは難しい。

 「Recreational riot」と表現されるお気楽な参加者も数多くいたようで、そうした者へと暴動が「伝染」していくのに、SNSが大きな役割を果たしたという。

 「アラブの春」という民主主義への道をこじ開けたのがSNSなら、暴動というカオスへと民衆を導いたのもSNSだったのである。

模倣犯による犯罪の連鎖

 鉄道線路への置き石から凶悪な強盗に至るまで、犯罪の「伝染」とでも言おうか、同じような事件が続けざまに起こることは珍しくない。いわゆる「コピーキャット(模倣犯)」による犯罪の連鎖である。

 こうしたことは、実際に起こった事件ばかりか、テレビや小説、そして映画といったフィクションも引き金となることがある。

 だから、ひとたび事件が起これば、メディアはそうしたものを躍起になって探そうとする。ジョン・レノン暗殺犯マーク・チャップマンはJ・D・サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」が愛読書だったとか、秋葉原通り魔事件の犯人が使ったダガーナイフはRPG「ドラゴンクエスト」の「アイテム」だった、といった類の話である。

 7月にノルウェーで発生した史上最悪の銃乱射事件でも、ラストに壮絶な銃撃シーンのある映画『ドッグヴィル』(2003)が槍玉に挙げられていた。