「人口が減少し高齢化も進んでいる。日本も移民に頼るべきだね」
「移民は日本の文化を壊すのではないかな。やはり、移民を受け入れずに女性などの有効活用で図るべきだよ」
日本の未来を考える際に、こうした話題になることも多いと思います。ただ、ここで1つ気になる前提があります。「移民は喜んでいつでも日本に来てくれる」ということです。本当でしょうか?
筆者とビジネススクールでともに勉強をした日系ブラジル人で、工学博士号を取得しているケン・ワカバヤシさんは次のように言います。
「日本に移住し技術力もある日本企業で働くことも考えたが、移民に対して冷たい日本よりも、積極的に移民を受け入れようとしている米国で働く選択をした」
また、中国から日本に来て東京大学で修士号を取得して精密機械大手企業で働いていたTさんは次の言葉を残して日本を離れていきました。
「日本に住んでいると放射能汚染も怖いし、給料も日本より高いので、香港の研究所に行く」
これが技能のある移民の現状です。
中途半端な政府の対応
厚生労働省が三菱総合研究所に委託し2003年に提出された、移民の経済効果に関する研究があります。同研究では、移民の日本経済への効果を「技能のある移民を受け入れた場合のみ日本のGDPは上昇する」とまとめています。
一方で、「技能のない移民(単純労働者など)を受け入れれば産業変革が遅れて日本のGDPは逆に減少する」というのです。
よく言われているような、移民を技能の有無で分けず「労働力不足を埋める移民を受け入れる」という考えは、日本にプラスの影響をもたらさない可能性もあるという見解が出されました。
こうした研究結果を基に、日本政府は技能の高い移民を受け入れる方向に舵を切り始めてはいます。しかしながら、次に見るように非常に中途半端。