前回の小欄において、ロシアの戦略核戦力が減少しつつある現状をご紹介した。今回はその続編として、ロシアの軍需産業全体で持ち上がっている生産能力の問題を取り上げることにしたい。

納期が守られたケースはわずか35%

ロシア空軍のSu-34(ウィキペディア

 戦略核兵器に限らず、ロシアではこの数年、国防省の発注した装備品が納期通りに納入されなかったり、納入数が発注数を大幅に下回るという状況が続いている。

 例えば2009年度のロシア軍の発注のうち、数量・納期が守られたケースはわずか35%に過ぎなかった。

 一例として、空軍が調達中の「Su-34戦闘爆撃機」の例を挙げてみよう。Su-34を製造しているのはスホーイ社のノヴォシビルスク航空機工場(NAPO)だ。

 空軍はNAPOと2006年に多年度調達契約を結び、2007年にまずは2機、2008年と2009年には各10機ずつの合計22機を調達する計画だったが、実際にこの期間に納入された機体はわずか3機に過ぎなかった。

 しかも、NAPOはこれに対して違約金を課されるわけでもなく、すでに支払われた費用はそのままうやむやになってしまっている。

4年間で兵器の平均価格は2倍に

 もう1つ、価格値上がりの実態についても触れておきたい。核ミサイルの値上がりが著しいことについては前回も書いた通りであるが、その他の兵器の値上がりも深刻だ。

 ロシア会計検査院の報告によれば、2005年から2008年までのわずか4年間で、兵器の平均価格は2倍に跳ね上がったという。いくらロシア経済が慢性的なインフレに悩まされているとはいえ、これは異常な上昇率だ。

 ウラジーミル・プーチン首相もこのような実態には苛立ちを隠していない。装備調達についての会議の席上、価格値上がりについて報告を受けたプーチン首相は、その場に居たアレクセイ・クドリン財務相に今年のインフレ率の見通しを尋ねた。

 クドリン財務相が「7~7.5%」と答えると、「だが、軍用装備の値上がりは5%とか7%、8%なんてレベルじゃないじゃないか。その何倍もだ。どうなってるんだ?」と怒りを露わにした。