今年6月1日、米露は、新核軍縮条約(新START)に基づく核削減の状況を公表した。
このデータによれば、ロシアが保有する核戦力は、核弾頭1537発、運搬手段(大陸間弾道ミサイル[ICBM]・潜水艦発射弾道ミサイル[SLBM]・爆撃機合計)521基/機、配備/非配備状態の発射装置(SLBM発射管・ICBM地下サイロ・爆撃機合計)865基/機であるという。
新STARTでは本来、2018年までに弾頭数を1550発以下、運搬手段を700基/機以下、発射装置を800基/機以下まで削減すると定めていたので、発射装置以外は条約の期限より7年も早く目標を達成してしまったことになる。
米国よりも核軍縮に熱心な結果なのか?
一方、米国は弾頭1800発、運搬手段882基/機、発射装置1124基/機で、条約の制限内に収めるためにはさらに核削減を進めなければならない。
このことは、ロシアが米国よりも核軍縮に熱心であることを示しているわけではない。
周知のようにバラク・オバマ米政権は「核のない世界」をスローガンに核軍縮を積極的に推進しており、新START条約の交渉過程でも、弾頭を1000発以下まで削減することを提案していたと伝えられる。
一方、ロシア側は、国境を接する中国を抑止する必要もあって米国より多数の弾頭を保有する必要を主張し、結局は上記の1550発という数字に落ち着いた。
では、このような経緯にもかかわらず、ロシアの方が核保有量が低下しているという状況はどのような理由によるものであろうか。
以前、新START条約について取り上げた際にも紹介した通り、ロシアの戦略核戦力は老朽化によって減少の一途をたどっている。
ソ連時代に開発・製造された多くの弾道ミサイルが旧式化しているうえ、メンテナンス費用の不足や、ソ連時代の製造元が現在はウクライナ企業になってしまったこと(大型ICBMを設計していたユージュノイェ設計局など)などが重なり、毎年数十基単位でミサイルが退役し続けているのである。