昨年12月22日、米上院外交委員会は、従来の第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新核軍縮条約(新START)を批准した。続く今年1月25日には露上院でも批准決議が通過し、同条約発効に向けた条件が整った。
一見すれば大幅削減だが、実態は・・・
では、これによって、核軍縮はどれほど進展するのだろうか。
START1では、米露が保有できる核兵器の上限が核弾頭6000発、運搬手段(弾道ミサイルや爆撃機)1600機/基までとされていた。
これに対して今回の新STARTでは、弾頭の上限が1550発、運搬手段は700基/機(予備も含めて800基/機)とされているため、一見すれば大幅な削減に見える。
だが、これは、両者の削減目標のみを単純に比較した場合の話である。もう一歩立ち入って、それぞれの「カウントルール」に注目してみると、その実態は全く違ったものであることが見えてくる。
START1は、冷戦の最中の1982年から交渉が開始され、1991年に締結された(発効は1994年)。このため、核軍縮という目標は共有しながら、その根本においては、米ソの相互不信を前提とした部分がある。
相互不信を背景に生まれたカウントルール
その最たるものが、「カウントルール」だ。簡単に言ってしまえば、米ソがお互いの戦力を「正直には申告しないだろう」という想定に基づいて、なるべく客観的に保有数を確定しようというものである。
例えば、潜水艦やミサイルの地下発射管(サイロ)、爆撃機などは非常に大きく目立つため、人工衛星や査察団の立ち入り査察によってほぼ総数を確認することができる。
一方、それぞれの運搬手段に搭載された核弾頭一つひとつを把握するためには、実際にミサイルの弾頭カバーや爆撃機の爆弾倉を開けて中身を確認せねばならず、米ソ冷戦下でそこまで立ち入った検査を行うことは現実的ではないと考えられた。
そこでSTART1では、それぞれの運搬手段に搭載されている弾頭数を、一律のルールでカウントするという方式が採用された。