エコノミスト・カンファレンス「ベルウェザー・シリーズ2011―アジア太平洋地域における金融の未来像」のリポート第3回の今日は、『国家財政の再考:新たな時代の金融に向けて』と題されたセッション。

 国債発行に依存した日本の財政のあり方、巨額の個人金融資産の有効な活用法をテーマとして取り上げる。

 パネリストは財務省の尾立源幸政務官、RHJインターナショナル・ジャパン シニアアドバイザーの田幡直樹氏、慶応義塾大学経済学部の吉野直行教授、メリルリンチ日本証券調査部チーフエコノミスト マネージング ディレクターの吉川雅幸氏。司会はエコノミスト誌東京特派員のケネス・クキエ氏。 

2014~16年に消費税率を10%に

クキエ このセッションでは、国の債務問題をいかに解決するのかというテーマを議論したいと思います。尾立源幸財務政務官に口火を切ってもらいましょう。

尾立 日本の財政は、1990年頃までは歳入・歳出ともに右肩上がりでした。ところがバブル経済が崩壊し、様々な減税政策を行った結果、税収は伸び悩みに転じました。

財務省・尾立源幸政務官 (撮影:前田せいめい、以下同)

 一方、歳出は社会保障費の伸びで増加しています。ここ3年間は、税収よりも借金が上回る異常な状態です。社会保障費は1990年には全体の17.5%でしたが、2011年には31%を占めるまでに増えています。

 2010年6月、政府は2010年から2015年の5年間でプライマリーバランス赤字を半減、2020年までの10年間でプライマリーバランスを黒字化する目標を策定しました。

 また、2021年以降、国・地方を合わせた債務残高をGDP比で安定的に低下させる目標を立てています。具体的な方策としては、各個人にIDをつけて管理する共通番号制の導入、社会保障の安定財源としての消費税増税などがあります。

 消費税の使途は、年金・医療・介護・少子化など社会保障分野に限定します。増税時期と税率が最大の懸案でしたが、遅まきながら2014~16年の間に、税率10%を目指します。