東日本大震災の発生から5カ月が経過した。震災の甚大な被害を受けた日本の自動車会社だが、国内サプライチェーンの急回復とともに、正常な生産体制に戻ってきた。主要なメディアの論調では世界シェア奪還への楽観論が展開されている。

 だが、果たして実態はどうなのか。

 トップ企業であるトヨタ自動車の実状を探ってみると、残念ながら、静かに同社株を回避するムードが広がっているようなのだ。

在庫不足が解消してもV字回復には疑問符

 「震災以来、慢性的な在庫不足が続いてきたが、秋口以降は解消し、急速に販売状況が改善する」(外資系証券アナリスト)・・・。

 これは、世界市場の主戦場である北米市場の状況を解説したリポートの一部だ。先に当コラムでも触れたように、日本勢が震災の影響で苦戦を強いられた間、ヒュンダイやキアなど韓国勢が急速にシェアを伸ばした。

 8月2日に米調査会社オートデータが発表した7月の米国新車販売台数を見てみよう。

 トヨタ(ゼネラル・モーターズ=GM、フォード・モーターに次いで3位)は前年同月比で22%減、ホンダ(同6位)は同28%減と、それぞれ販売台数を減らした。特にトヨタは、販売台数が13万802台に落ち込み、13年ぶりの低水準を記録した。

 トヨタはどう巻き返そうとしているのか。

 同社は8月2日、2012年(暦年)の世界生産台数に関し、過去最高となる890万台に増やすとの見通しを明らかにした。「市場関係者が予想していたよりもはるかに早いピッチで生産が回復、収益構造も好転の兆しが出てきた」(国内証券アナリスト)ことは間違いない。

 背景には、大震災で被災した同社工場、系列企業やサプライチェーンの懸命の努力がある。筆者は何度も東北の被災地取材に出向き、その惨状を目の当たりにした。それだけに、被災地域にあるサプライチェーン企業の努力には真摯に敬意を表したい。