東日本大震災の発生から2カ月が経過した。東北、東日本一帯の津波被害の大きさには目を覆うばかりだ。

 同地域で被災した大手、中堅、中小の企業も、徐々にではあるが通常の生産ペースを取り戻しつつある。こうした中、日本企業の復活のピッチの速さに着目する海外投資家も少なくない。阪神・淡路大震災以降の日本経済の立ち直りと同様のイメージを抱く向きもある。

 しかし、今回の震災に当たっては、道のりは決して平坦ではない。

とりわけ深いダメージを受けたクルマ業界

 震災以降、日本のみならず、世界中の工場から悲鳴が上がった。

 内外の大手製造業を中心に、電子部品や素材等の在庫を効率的に管理する供給網(サプライチェーン)が徹底していたことが完全に裏目に出たからだ。

 詳細は他稿に譲るが、大手製造業各社は、必要な部材や部品を供給元である企業から調達し、完成品を組み上げてきた。今回の震災では、東北各地に散らばった部材、部品メーカーの多くが被災したため、製品を完成させることができなくなった。

 クルマを例に取ってみると分かりやすい。例えば小型商用車を組み上げる際、ダッシュボードに張り付けるプラスチック製の薄板1枚がなくても製品は完成せず、出荷できなくなる。

 実際、クルマの電子制御全般を司るマイコン製造大手で、世界シェアが3割近くになるルネサス エレクトロニクスが甚大な被害を被ったため、日本メーカーの大半のほか、米ゼネラル・モーターズ(GM)など海外大手メーカーも操業停止に追い込まれる事態となった。

 日本の大手クルマメーカー8社の場合、震災以降の1カ月間で生産台数がほぼ半減した。前年同月は約91万台だったが、これが一気に40万台レベルに落ち込んだのだ。

 メーカー各社は代替部品を購入したり、被災地の工場の復興が進んできたことから、ようやく生産活動を正常な状態に戻しつつある。