中国高速鉄道事故は情報規制という側面で見ても初めてだらけのケーススタディとなった。いや、現在進行形で「なっている」。
共産党建党90周年記念に合わせ北京~上海間の高速新線による高速鉄道が開通したのもつかの間、その記念月に起きた大事故は中国全土に伝わったのはいまさらな話ではあるが、もう少し中国のネット規制という側面からこの事件を見ていこう。
列車事故のニュースはなぜ、一日千里を走ったか
中国高速鉄道事故は誰でも知る事故だ。中国政府不信および同胞の作るモノへの不信から、人々の間で怒りや諦めの感情が起きた。
ネットでは事故当初連日トップで紹介されたほか、テレビや新聞でも事故が起きたことについては日々報じられた。
ネットではブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、掲示板、ツイッター(twitter)似のミニブログ(中国でいう微博)などで日々事件への不満が“消されることなく”書き込まれている。中国のネットをウォッチしているが、こうしたケースは初である。
中国高速鉄道事故に前後した事件では、「江沢民死去説」「大連原子力潜水艦放射能漏れ説」、もう少し前を振り返れば「内モンゴル自治区での争乱」があった。
日本でこそ普通に報じられるが、中国ではテレビや新聞で報じられることはなかった。勇み足かこうした触れてはいけない話題を掲載するメディアがあれば、そうした記事はすぐに消去されるか書き換えられる。
よほどアンテナが高くない限り政府批判の記事は見られない
中国ナンバーワン検索サイトである「百度(Baidu)」でNGワードをキーに検索すると「法律法規や政策により一部検索結果は表示されない」というメッセージが表示される。
争乱の最中の内モンゴル自治区では、自治区内からSNS「人人網」にアクセスできなくなった。(参考記事:「見えた! 中国政府の完璧な情報統制術 模倣サービスで利用者を囲い込み、外国製品を駆逐へ」)
しかしながら、よほどアンテナを中国政府への不満に向けていない限り、人々は政府が好ましくないとするニュースを見ることはない。
7月中旬にCNNIC(China Internet Information Network Center)が発表した統計によれば、中国全人口の36.2%に当たる4億8500万人がインターネットを利用しているとのこと。