7月24日、地上波テレビ放送は、東日本大震災で被災した東北3県を除き、デジタルへと完全移行した。その電波塔たる東京スカイツリーも予定の634メートルにまで高さが到達、着工当初から散々テレビが話題を追い続けてきたこともあって、既に新たなる観光名所となっている。

取り壊されるかもしれない東京タワー

再現された建設途中の東京タワーのある昭和の風景(『ALWAYS 三丁目の夕日』のパンフレット裏表紙)

 これまでアナログ波の電波塔として役割を果たしてきた東京タワーは、災害時の予備電波塔になるとのことだが、取り壊しという選択肢もあるようで、今後についてはいまだ微妙な状況にある。

 昭和33(1958)年の東京を舞台に、その東京タワーが333メートルの高さまで延びていく姿と並行して物語が進行していく『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)には、テレビを三種の神器の1つとして有難く使っていた頃の庶民の姿がある。

 テレビは、ニュースをはじめとした重要な情報源であり、スポーツや映画を楽しむ道具として誰もが認めていた時代の話である。

それから50年余りたった今、テレビはアナログからデジタルへと変わった。そして、テレビそのものの立場も変転の時を迎えている。

 ニュースなどの情報ソースや即時性といった面では既にインターネットにその地位を奪われ、番組ソフト提供という意味でも、DVDやネットからのダウンロードといった手段に取って代わられつつあり、その立ち位置はますます不明瞭となる中でのデジタルへの全面移行である。

チャンネルサーフィンで暇をつぶすリタイヤ層

 1970年代終わり、親戚も友人もいない初老の男チャンスがテレビだけを伴侶とし、ただただチャンネルサーフィンを繰り返す姿が印象的な『チャンス』(1979)を見ていても、ピンとくるものはなかった。

 しかし、それは今、至る所で見られるリタイヤ層の姿そのものだ。私も、2~3年前までは、狭いビジネスホテルの部屋に1人で泊まっていると手持ちぶさたとなり、テレビをつけてはチャンネルサーフィンしていたから、そんな人々の気持ちも分からないことはない。

 ところが、今では、ビジネスホテルでもWi-Fi環境が完備されている所が少なくなく、日本中どこでも3Gでネットにアクセスできる世の中だから、情報源や暇つぶしの道具としてのテレビの立場は、既に私の中では消え失せている。

 こうしてテレビ放送との距離は拡がる一方なのだが、東日本大震災発生時、余震の心配もあって自宅にいることが多くなったため、地震・津波や原発事故処理の進捗状況などの情報を得ようと、久しぶりにテレビをつけっぱなしにすることにした。