インターネット上で横行する海賊版コンテンツの共有行為を撲滅しようと、米国で大規模な取り組みが始まった。参加するのは、全米レコード協会(RIAA)や米国映画協会(MPAA)のほか、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の米AT&T、米コムキャスト、米タイムワーナー・ケーブル、米ベライゾン・コミュニケーションズなどだ。

常習犯ではなく一般ユーザーに警告、罰則措置も盛り込む

 レコード協会や映画協会などはこれまで、違法コピーされた音楽や映画のファイルを大量にネットに流したり、ダウンロードしたりするユーザーに対して訴訟を提起して対処してきたが、新たな取り組みはそうした常習者が対象ではなく、日々の生活の中でつい出来心のように海賊版に手を出してしまう一般のユーザーに対して警告するのが狙いだという。

 新たに「コピーライト・アラート・システム」と呼ぶ仕組みを年内にも導入するもので、各社はそのためのガイドライン作りで協議してきたが、このほどようやく意見がまとまった。

 この取り組みは、まず、レコード協会や映画協会から依頼された業者が、専用ソフトを使って、ファイル共有サービスなどで公開されている海賊版コンテンツを発見し、ユーザーを特定できたら契約しているISPにネットアドレスや海賊版の情報を知らせる。

 するとISPはそのユーザーに対し電子メールなどで警告する。この警告は最大6回行い、段階ごとに厳しい内容になっていく。海賊行為の違法性を認識させるべく啓発サイトに誘導したり、警告が5回以上になるとネット回線のスピードを遅くしたりする罰則も用意している。

 ただし、この取り組みは政府機関による法執行ではないため、ユーザーのアカウントを閉鎖し、電子メールを使えなくするといったことまではしないという。

長年の論争に終止符

 米ウォールストリート・ジャーナルは、今回の取り組みは画期的だと伝えている。当初、ISPの中には、海賊版の問題はあくまでもハリウッドの問題と主張する企業が少なくなかった。そうしたISPの姿勢をエンターテインメント業界は強く批判しており、両者の間ではいさかいが絶えなかった。