4-6月期末にあたる6月30日の米国市場は、株安・債券安・ドル高の展開となった。

 この日発表された米景気指標は、まちまちの内容。市場予想中心から上振れたのが、39.9に上昇した6月のシカゴ購買部協会製造業景況指数と、前年同月比▲18.1%(20都市ベース)に下落幅を縮小した米4月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数。これに対し、市場予想中心から大きく下振れたのが、米6月のコンファレンスボード消費者信頼感指数である。

 コンファレンスボード指数(1985年=100)は今回49.3で、4カ月ぶりの低下。前月改定値である54.8から5.5ポイント下がった。内訳を見ると、現況指数が24.8(前月比▲4.9ポイント)、期待指数が65.5(前月比▲6.0ポイント)で、ともに悪化した。

 米国の消費者マインドを見ていく上で市場の関心が最も高いコンファレンスボード指数の今回6月分については、市場の予想レンジは前回5月実績(今回改定前の数字で54.9)を挟んで上下に分散していた。筆者は、現況についての消費者意識を示す週次の指標であるABC指数(米ABCニュースによる消費者信頼感指数)が6月21日までの週に▲53(前週比▲4ポイント)となり、昨年末から年始にかけて記録した過去最低水準▲54に近づいた動きを見て、6月の消費マインドは悪化しているという見方を取り、コンファレンスボード指数は53.5に小幅低下するものと予想していた。実際には、筆者の予想よりも大きい幅で、悪化が記録された。

 同じ6月分の消費者マインドに関する指数としては、ミシガン大学の消費者センチメント指数(1966年2月=100)の確報が、6月26日に発表されている。こちらは70.8(前月比+2.1ポイント)。2月に記録した56.3をボトムに4カ月連続で改善し、「リーマン・ショック」が起こった昨年9月の水準(70.3)をわずかに上回った。しかし内訳を見ると、これまで堅調に推移してきた期待指数が4カ月ぶりに低下に転じるという変調が見られる。筆者は、ミシガン大学指数も今後、コンファレンスボード指数と同様に反落すると予想している。

 コンファレンスボード消費者信頼感指数は、2月に記録した25.3をボトムに、3カ月連続で上昇して、5月分では昨年9月の「リーマン・ショック」前後の水準を回復していた。具体的には、昨年9月分が61.4、10月分が38.8で、今年5月分がすでに述べたように54.8となっていた。しかしそこで、消費マインドの改善が早くもつまずいたわけである。

 主因は、雇用環境の悪化に求められる。今回6月分で、雇用の現況について、「職が豊富」とする回答は4.5%で、前月の5.8%から低下し、今般景気悪化局面における最低を更新。「就職が困難」とする回答は44.8%で、前月の43.9%から増加した。

 将来の雇用についての期待も、6月は悪化した。「雇用増加期待」の回答は17.4%で、前月の19.3%から減少。「雇用減少懸念」の回答は27.3%で、前月の25.6%から増加した。このほか、所得の面でも、米消費者の期待は、6月に悪化に転じた。

 同じ6月30日に発表されたABC指数の直近データ(6月28日までの週)は▲51で、前週の▲53から2ポイント改善した。レギュラーガソリン小売価格の全米平均が同じタイミングで9週間ぶりに下落に転じており、これが好材料になったものと考えられる。米国の消費マインドがこの先、一方的に悪くなるというわけではないのだろう。

 それでも、雇用情勢の悪化が続くということは、米国の経済全体にとって、さらにはリテール向け貸し出しの焦げ付き増加を通じて米国の金融システムにとっても、非常に大きな重石である。米国の最高経営責任者(CEO)は、景況認識が上向いていても、雇用を増やすことについては慎重姿勢を維持している。

 過去の経験則と同様、米連邦準備理事会(FRB)は失業率がピークをつけて低下に転じたことを十分確認した後でなければ、利上げに転じることはできないだろう。このことは、超低金利政策が長引くという有形無形の「時間軸」を通じて、米国の長期金利全体を押し下げる要因になってくる。筆者は引き続き、内外長期金利の一段の低下を予想するスタンスである。