微笑の国、タイ。首都バンコクは、ザ・シティー・オブ・エンジェルと呼ばれる。米ニューヨークやロサンゼルスが、ビッグ・アップル、ビッグ・オレンジと呼ばれる理由はその名前からは想像しにくいが、バンコクはまさに読んで字のごとしである。

日本企業の進出ラッシュに沸くタイ

バンコクの中心部を流れるチャオプラヤ川と建設中の高層ビル

 優しい女性の微笑みが訪れる者の緊張を一瞬で解きほぐし、癒やされた気持ちにしてくれる。とりわけ日本人にはそれがたまらないらしい。欧米の植民地支配を受けなかった歴史も手伝って、何か連帯意識のようなものを感じるのかもしれない。

 そのタイがいま、日本企業の進出ブームに沸いている。企業だけではない。経済の停滞が長引き、日本に人生のチャンスを見出せなくなった人たちが、タイに職を求めて、あるいは起業のチャンスを求めて集まっている。

 土木や建設などのインフラ産業、自動車や家電などの製造業がアジアにおける拠点として進出してきた長い歴史があるが、いま、タイではこうした産業だけでなく、これまでは日本国内が主体だったサービス産業が次々とタイに進出を果たしている。

 まるで日本の将来など露ほどにも気にかけていない自己中心的な政治家や官僚に対し、日本ではもうビジネスができないと行動で示しているような格好だ。

 タイに次の成長を託している企業の1つが東証1部上場企業の日本駐車場開発である。今からちょうど1年前(2010年7月)、タイに進出したと思ったら、次々とバンコク市内の大型商業施設から受注、早くもバンコク一の駐車場サービス会社になろうとしている。

大市場の中国ではなくタイに目を向けた日本駐車場開発

 同社は日本の大都市の駐車場ビジネスで急成長した企業であり、例えば東京駅周辺の丸の内地区のビルでは、丸ビルや新丸ビルをはじめとして、新設ビルの大半の駐車場は同社の管理下にある。

 新丸ビルや丸ビルの駐車場にクルマを入れてまず驚くのは、地下の駐車場で対応に出てくるのがいつも若くて美しい女性ばかりということだろう。駐車場の管理といえば、無人か無愛想で強圧的なおじさんの専売特許と思っているドライバーには新鮮な驚きがある。

 もちろん対応も親切丁寧でムダがない。社員教育は手の上げ下げ一つ取っても徹底している。日本駐車場開発は、これまでの地下で暗い、汚いといった駐車場のイメージを払拭し、快適で気持ちの良いサービスを取り入れることで成長してきた企業なのである。

 駐車場で待ち受けるのは、若く美しい女性というだけではない。みな4大卒で流暢な英語を話す。外国人が来ても、言葉が分からなくて係員が右往左往するような姿はここでは決して見られない。