日本経済は100年に1度という大不況で大変な状況だが、実は日本は「かつて経験したことのない大不況」を何回も経験してきた。

 ニクソンショック然り、エネルギーショック然り、円高ショック然り。不況のたびに日本の企業は、節約し、掃除をし、人を育て、技術を磨き、新しい分野に挑戦し、新しい顧客を開拓し、辛抱強く耐え、不況が終わる頃には一段と筋肉質で逞しい体に生まれ変わってきた。

KTX(株)
〒483-8111
愛知県江南市安良町地蔵51

 先日おじゃました愛知県江南市にあるKTX(旧:江南特殊産業)は、不況を乗り切るベテランサーファーだ。

 かつてエネルギーショックの大不況の時には、本業の仕事が全くなくなったので、もともと得意だった革の洗浄技術を生かしてパチンコ屋の椅子を洗浄する商売を始めた。壊れた椅子の修理もしたから、お得意さんに非常に喜ばれた。

 しかし、その時も苦しいながらも費用を工面して、金型の研究開発を継続した。この時開発されたポーラス電鋳技術が後に会社を救うことになる。

 いずれにせよ、かっこ悪いも、みっともないもない。生き残るためには何でもやる。それが中小企業だ。

「デンチュー」でござるぞ

 「デンチューでござる」といえば江戸城松の廊下で浅野内匠頭を後ろから抱き留めた梶川与惣兵衛(私に言わせれば、とんだお節介野郎だ!)の有名なセリフだが、金型の世界で電鋳(でんちゅう)といえば電気鋳造法の略。

 電気メッキは対象物の表面に薄く膜を構成させるのだが、膜を作る際に3~5ミリの厚さまで分厚く金属を析出させ、卵の殻を剥がすようにガバッと剥がせば、立派な金型の出来上がりだ。

 例えば革張りのダッシュボード模型に3~5ミリ厚のニッケルメッキをし、ガバッと剥がせばダッシュボードを成型するための金型となる。革模様や木目をそっくりそのまま写し取れるのが特色である。今は広く世界中の自動車メーカーで使われている。その電鋳型の世界ナンバーワンの企業がKTXだ。

 創業者は野田泰義氏。創業は1965年。当初は仏具の飾り金具を作る会社として発足した。当時弱冠24歳だ。

 野田さんと電鋳の出会いは古い。野田さんが工業高校生だった頃、鋳物職人だった従兄弟が、熔けた銑鉄の湯で顔に大やけどを負った。その姿を見て電気メッキの技術を使って型を作れば、やけどを負うことはなかっただろう、と思ついたという。それが電鋳に興味を持つきっかけとなった。