予防医学を専門とする水上治医師に2回にわたってがん発症のリスクを軽減する生活習慣についてアドバイスをもらったが、最後に先生の最新の著作『超高濃度ビタミンC点滴療法』(PHP研究所)で紹介されている新しいがん治療について触れておきたい。

高濃度のビタミンC注射に抗がん効果、米研究

ビタミンCの点滴はがんに効く〔AFPBB News

 ビタミンCががんに効くということは、がん治療の現場をあちこち取材する中で、私も何度か聞いたことがあった。しかし、あまりにも身近な栄養素なので注視することがなかったのだが、あらためてこの治療法を調べてみると、実に画期的なことに驚いた。

 なぜかというと、「抗がん剤」に匹敵するほどの効果を持ち、しかも、抗がん剤のような副作用がないからだ。

ポーリング博士の説は、正しかった

 1997年にアメリカのヒュー・リオルダン博士らが発表した「化学療法的かつ生物学的反応を刺激する薬剤としての静注ビタミンC」という論文がある。この中で次のような実験が紹介されている。

 タイプの異なる4種類のがん細胞を血清に入れて培養し、そこにビタミンCを加える。ビタミンCの濃度を100、200、300、400ミリグラム/デシリットルと上げていくと、がん細胞がどんどん死滅していく。がんの種類によって死滅する濃度は異なったが、4種類とも400ミリグラム/デシリットルではほとんど完全に死滅した。つまり、ビタミンCには強力な抗がん作用があるのだ。

 ビタミンCに抗がん作用があるということは、かなり昔から言われていた。特に、ノーベル化学賞と平和賞を受賞した天才科学者ライナス・ポーリング博士が発表した1976年の論文は、驚異的だった。

 治療不能の烙印を押された進行がん患者100人に、毎日10グラムのビタミンCを投与し、投与されないがん患者(コントロール群)1000人の生存日数を比較。500日の時点でコントロール群1000人全員が死亡したのに対し、ビタミンC群は100人中11人が生存。そして平均生存日数は、ビタミンC群がコントロール群の4.2倍もあった。最終的には、ビタミンC群はコントロール群に比べ300日以上長く生存している。

 なぜ、こうした貴重な事実が世界に浸透しなかったのか?

 それはポーリング博士の学説を認めたくない旧勢力の反撃だった。詳細は割愛するが、米国のメイヨー医科大学が、効果がないとする臨床結果を発表したのだ。