さる6月7日、第2回日中ハイレベル経済対話が東京で行われた。

 日中両政府のプレスリリースによれば、(1)経済・金融情勢、(2)貿易・投資協力、(3)エネルギー・環境面の協力と(4)地域・グローバルレベルの経済問題への取り組みといった4項目を中心に対話が行われ、共通認識が得られたとしている。特に知的財産権保護や途上国支援など11の協議について合意し、大きな成果を収めたという。

 しかし、今回の経済対話は本当に当事者が強調するように、大きな成果を収めたのだろうか。

20年で14人も代わった日本の総理

 米国の中国ウオッチャーであるD.ランプトン氏は1990年代の米中関係を「同床異夢」と結論づけている。同様に、現在の日中関係も、ハイレベル経済対話の成果が強調されているとはいえ、恐らく「同床異夢」と結論づけても過言ではないだろう。

 中国政府は現在のタイミングでは日本政府と本気で議論をしたくないはずだ。もともとこのハイレベル経済対話は昨年12月に予定されていた。だが日程の調整がつかないという理由で、再三延期されてきた。

 ここで開催に踏み切ったのは、これ以上延期すると麻生太郎政権下での対話ができなくなるからだ。それを回避するために、今回の対話が行われた。しかし、具体的な懸案事項に関してはほとんど進展がなかった。

 なぜ、中国政府は本気で日本政府と対話をしようとしないのか。理由は極めて簡単である。おそらく長くても3カ月しか「存命」しないであろう麻生政権と本気で対話しても、合意事項を実行されない恐れがあるためだ。

 それにもかかわらず麻生政権との対話を実行したのは、日本政府のメンツを潰さないためである。本気で議論するなら、これから政権を握ると見られる民主党だろう。ただ、そこにも同様の条件がついている。民主党政権が長期政権となる見通しが立つことである。

 筆者は来日してから2008年でちょうど20年が経った。その間、日本の総理大臣は実に14人も代わっている。同じ期間に中国の国家主席となった人は3人しかいない。ちなみに、米国では今年、4人目の大統領を迎えた。

 強力な外交戦略を展開する前提条件の1つは、政治と政権の安定である。それを忘れてはならない。

 本来ならば、胡錦濤政権は残り3年余りの任期で日中関係を強固なものにしたいはずである。江沢民前政権の権威主義的な政治姿勢と違い、胡錦濤政権は対話を通じて周辺諸国との「和諧」(調和)を図ろうとしている。その中で、中国にとって最も重要な外交関係の1つは日中関係の修復である。

 しかしこれまでのところ、日本の指導者とひざを突き合わせて対話することはできていない。

単なる論点整理に終わった経済対話

 同床異夢の日中関係がそのまま表れたように、今回の経済対話は単なる論点整理に終わった。上記の(1)~(4)のいずれも日中協力の方向性の再確認に過ぎない。何をどうしようとしているかについて具体策の言及が欠けている。

 ここで指摘しておかなければならないのは、今回の対話が実務的な細かい話に終始していることだ。グローバル金融危機が両国に突きつけた深刻な問題に対する戦略的な対話になっていないのである。