10日の米国市場で、米10年物国債利回りが一時3.99%まで急上昇し、大きな節目である4%に肉薄した(2008年10月17日以来の高水準)。30年債利回りは一時4.8%台に乗せた。この日最大の債券売り材料になったのは、ロシア中央銀行第1副総裁が同国の外貨準備における米国債比率引き下げ方針に言及したことである。加えて、10年債入札が低調な結果と受け止められたことも圧迫要因になった。その後は買い戻しが入り、3.94%で取引終了。なお、2008年10月に米長期金利が上昇した局面では、15日に4.10%まで上昇したことがあった。
ロシアの米国債保有残高は、米財務省統計によると、3月末時点で1384億ドル。4カ月連続で増加している。また、ロシアの直近の外貨準備高4042億ドルのうち、米国債は約3割を占める(ロイター)。これに対し、ロシア中銀ウリュカエフ第1副総裁が購入すると表明した国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)建て債券は、100億ドル規模にすぎない。
また、ロシアの外貨準備において、ソブリンは主として短期債になっている(外貨準備運用では普通のこと)。しかも、ウリュカエフ第1副総裁は、ロシアはただちに米国債を売却するつもりはなく、満期償還まで待って、緩やかに他の資産への入れ替えを進めていく、と述べた。銀行危機が沈静化してきたため、銀行預金やレポを増やすという。それがどの通貨建てになるのかは明示されなかったが、少なくとも、ロシアが米国債の保有比率引き下げに今後緩やかに動くとしても、それは長期・超長期の米国債需給を直接悪化させるものではない。
上記のように、ロシア中銀高官発言は、冷静に見れば、米国債のイールドカーブがこの日に大きくベアスティープ化する材料だったとは言い難い。にもかかわらず米国の長期・超長期国債が売り込まれたのは、市場のセンチメントの悪さに起因している。言い換えると、需給に関連した悪材料に対して、あまりにも過敏になっていることの表れである。10年債4%前後でも長期国債買い入れの増額に動くつもりはないのかと、米連邦準備理事会(FRB)を試しにいっている感も強い。
この間、米2年債利回りは1.35%へと小幅上昇。年内といった早いタイミングでのFRBによる利上げを織り込んだ状態は変わっていない。