本当の職人っていうのは、ただモノをつくるだけの人をいうんじゃない。

 こだわりと意地と工夫、そして向上心をもってモノをつくる。ここが一番肝心なんだ。

 戦後の日本がここまで豊かになったのも、そんな人たちが大勢いて、発想と工夫で産業を支えてきたからだ。

 「景気がどん底だ」「先行きは真っ暗だ」「景気が悪いのは構造的な問題だ」なんて言ってる人がたくさんいるけど、本気で現状を打破しようとしているのかね。

 「日本が不景気だから、うちも景気が悪い」「あそこの会社ができないから、うちもダメだ」「中国や韓国にどんどん仕事が流れて、うちの仕事が減った」なんて言い訳しても始まらないよ。

「ほどほど」じゃイノベーションは生まれない

 企業は絶えず革新をしていかなければ、取り残されてしまう。

 昔は、呉服屋とか酒屋などで「創業100年」なんてのがたくさんあった。だけど、今、1つの商売を続けた場合、企業の寿命は30年くらいだろうね。

 様々な技術革新が起きて、商売のスピードはどんどん速まった。輸送システムも発達し、地球は以前よりもはるかに小さくなった。

 心臓の脈拍が早ければその分寿命が短くなるように、商売も動きが活発になれば、その分、終焉も早くなるというものだ。

 体を長持ちさせるには、小まめにメンテナンスをしたり、休養したり、無理をしないことが大切だ。商売の場合には、常に新しい商売にチャレンジして、革新していかなければならない。イノベーションしなければ置いてきぼりを食うわけさ。

 でも、「ほどほど」にやってたら、イノベーションは生まれない。

 おれは思いついたら夜中でも工場に入るし、お得意さんから急いでくれと言われれば、寝ないでも仕事をする。どっぷり仕事に浸ってなきゃ、いいものなんてできやしないし、素晴らしい発想なんて生まれない。

 だから、おれはこの歳になっても1日に3時間くらいしか寝ていない。昔からそうだったから、そういう習慣になってしまったんだな。