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 15年後に生き残れるのは、どのような自動車メーカーなのか? 脱炭素化、AI普及など、世界が「ニューノーマル」(新常態)に突入し、ガソリンエンジン車主体の安定した収益構造を維持できなくなった企業が考えるべき新たな戦略とは? シティグループ証券などで自動車産業のアナリストを長年務めてきた松島憲之氏が、産業構造の大転換、そして日本と世界の自動車メーカーの、生き残りをかけた最新のビジネスモデルや技術戦略を解説する。

 第11回は、トランプ氏の大統領復帰によって予想される自動車産業への影響を徹底分析。日系自動車メーカーにとってのチャンス、早急に求められる戦略の大転換を解説する。

トランプ政権2.0は日本の自動車にとってネガティブ

 米国の大統領選挙でトランプ氏が勝ち2025年から大統領に復帰する。トランプ氏は大統領選挙運動中から自動車に関する政策をいくつか挙げていたが、おそらく日本の自動車業界にとってはネガティブな影響が多く出るだろう。

 トランプ氏の基本政策は「アメリカファースト」であり、米国経済の立て直しと雇用維持を最優先するからだ。つまり、米国内での生産を優遇し、雇用を拡大させ、それを阻害する米国外からの輸入に対しては高関税をかけるという単純な考えが基本である。

 メキシコから米国への自動車の輸出は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)によって域内の部品調達比率などの条件を満たせば関税が免除されている。だが、トランプ氏は大統領選挙中からメキシコからの輸入車に対して200%関税をかけるという発言をしている。

 メキシコで現地生産を行うのは日産自動車、トヨタ自動車、ホンダ、マツダ、ゼネラル・モーターズ(GM)、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)、フォルクスワーゲン(VW)、BMW、起亜など11社だが、高関税が実施されればこれらの自動車会社は収益面でかなり大きなダメージを受ける。

 USMCAは発効してから6年後に見直しを行い、参加する3カ国が合意すれば、さらに16年間継続すると定められている。USMCAは2026年に見直しが予定されているが、トランプ氏はすでに大幅な見直しを宣言している。

 現行のルールでは、メキシコでUSMCAの原産地規則を満たす生産や加工を行えば、生産した企業の国籍にかかわらず、無税で米国へ輸出できる。しかし、トランプ氏はUSMCAの見直しで、中国などの国がメキシコを経由して自動車部品を無税で輸出することを防ぐ文言を盛り込むと述べている。