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根回し、派閥、権力争い…とかくネガティブなイメージが付きまとう「社内政治」。しかし世界的には主要な研究テーマの1つであり、健全で活力ある組織づくりに不可欠なものである。『社内政治の科学』(木村琢磨著/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再編集し、学術研究に基づく知見や技術を紹介。あわせて、社内政治の実践的な活用法も解説する。
組織図に現れない「現実的な権力構造」が変革の行方を左右する。その特定に有効な分析法とは?
評判分析
『社内政治の科学』(日経BP 日本経済新聞出版)
評判分析は、組織内で「実際に影響力を持っている」と評される人物を、他者の評価に基づいて明らかにする手法です。このアプローチは、「誰がパワーを持っているのか」を周囲の認識に基づいて把握します。公式な肩書きや役職ではなく、実際の評判から影響力を見出す点が特徴です。
評判分析は、まず社内の人々の中から信頼できる情報提供者(インフォーマントと呼ばれます)を選ぶことから始めます。一人だけではなく複数名を選ぶようにしましょう。
そして、そのインフォーマントに「誰が影響力を持っていると思うか」を尋ねます。たとえば「このテーマに関して影響力があるのは誰か」「誰の意見が最終判断に影響するか」といった質問をします。そして、名前が挙がった人物の一覧を作成していきます。インフォーマントに誰を選ぶかは、分析結果の信頼性を左右する重要な問題です。基本としては、特定の視点や利害関係に偏らないように、なるべくさまざまな部門や階層から幅広く選びます。
ここで、多くのインフォーマントから名前が挙がる人は、実際に影響力が高い可能性があります。インフォーマントが挙げる人がバラバラな場合は、インフォーマントを増やすことも検討するとよいでしょう。このようにして評判の集約を行い、より客観的な判断に近づけていきます。
評判分析は、組織図には現れない「陰の権力者」や「裏の調整役」を見つけるのに役立ちますが、注意しなければならない点もあります。分析が主観的な評価に基づくため、インフォーマントの視点や利害関係が結果に影響を与える可能性があります。






