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 根回し、派閥、権力争い…とかくネガティブなイメージが付きまとう「社内政治」。しかし世界的には主要な研究テーマの1つであり、健全で活力ある組織づくりに不可欠なものである。『社内政治の科学』(木村琢磨著/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再編集し、学術研究に基づく知見や技術を紹介。あわせて、社内政治の実践的な活用法も解説する。

 上層部と現場の橋渡し役であるミドルマネジャーに求められる政治的リーダーシップとは?

部門マネジャーとしての利害調整と資源獲得

社内政治の科学』(日経BP 日本経済新聞出版)

 ミドルマネジャーは会社全体の利益を考えて動く必要がある一方で、自分の部署やチームの立場を代弁する役割も担っています。さらに、ミドルマネジャーの使命には、部門の業績向上だけでなく、部下のモチベーションの向上や、将来を見据えた人材育成も含まれます。

 これらを実現していくためには、ミドルマネジャーは、単に妥協して譲るだけではその役割を果たしたとは言えません。部分最適に偏らない範囲で、自分の部署の利益を主張し、実現することが求められます。

 部署として必要な機会や資源を得れば、部下の成長機会を増やすことができます。また、機会や資源を確保して部署の業績が向上すれば、部下たちは自信をつけ、モチベーションも高まります(Bandura, 1997)

 利害調整をうまく進めるためには、社内のキーパーソンと協力することが不可欠です。これは、社会的資本理論(Burt, 1997)でも示されているように、人と人とのつながりによって、個人では生み出せない価値が生み出されるという考えです。利害調整や資源の獲得は、一人で行うのは難しくても、誰かと協力することで実現できる場合があります。

 新卒一括採用や配置転換が一般的な日本の大企業では、同期入社組のつながりや、さまざまな部署を渡り歩く中で形成した人脈が重要になります。そのような慣行がない会社で働く人や、中途入社で同期とのつながりが少ない人は、能動的にキーパーソンと関係を築く必要があります。キーパーソンが誰なのか分からない場合(分かっている場合でも)は、まずは身近な人々との信頼関係を築くことが基本です。