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 25歳でダンキンドーナツの経営を引き継いだ若きCEOは、売上高1000万ドルの小規模チェーンをいかにして25億ドルの世界的企業へと成長させたのか? 『世界最大ドーナツチェーンの成功法則』(ロバート・M・ローゼンバーグ著、茂木靖枝訳/早川書房)から一部を抜粋・再編集。1963年から98年にかけて同社を率いたロバート・M・ローゼンバーグ氏の「経営の軌跡」を振り返る。

 材料だけでなく「人材の質」を高めるために、2代目CEOがとった戦略とは?

教訓その3 品質が重要

世界最大ドーナツチェーンの成功法則』(早川書房)

 製品またはサービスの品質を中心としない長寿企業を見つけることは困難だ。これは食品ビジネスで特にあてはまる。

 ハインツのケチャップ、バドワイザーのぶなの木(ビーチウッド)製法のビール、ハーシーのチョコレートバー、どの製品にもふたつの共通点がある。どれもおいしいし、どれも最高級の食材でできている。ダンキンドーナツとバスキン・ロビンスの場合は、本物のクリーム、本物のフルーツ、見つけられるかぎり最高のスパイスと調味料を使用している。

 厳選された素材がきわめて重要という信念は、わたしが9歳のときにウォーターブリート造兵廠を訪れたときに植えつけられた。その日、喧々諤々(けんけんがくがく)の集会のなかで、父は価格よりも品質について熱弁を振るった。

 この信念は、わたしが社長に就任した早々にふたたび強まることになる。ノースカロライナ州ダーラムにあるデューク大学のライスハウス・ダイエットセンターに、父が何度も長期滞在していた折に出会った、チャーリー・ルービンの物語を父が話してくれたときのことだ。

 父は、サラ・リーを創業したベーカーであるこの人物とわたしが会うことを、このうえなく楽しみにしていた。チャーリーの最も有名な商品は、1950年代に自身が広めたサラ・リーのパウンドケーキ、そして、スーパーマーケットで売られる高品質の冷凍焼き菓子の数々がつづく。

 わたしはシカゴへ向かい、チャーリーに会った。チャーリーはすでにコンソリデーティッド・フーズのネイト・カミングスに会社を売却していた。そう、当社に750万ドルでの買収を申し出て、わたしがことわった、あのネイト・カミングスにだ。