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消費者のニーズが多様化する中、チェーン小売企業にとって出店における攻めと守りの戦略をどのように描くかが事業成功の大きなポイントとなる。本稿では『チェーン小売企業の出店戦略』(西川みな美著/千倉書房)から内容の一部を抜粋・再編集。
同じ地域に自社店舗を密集させるドミナント戦略は、他社との競争、自社店舗同士の競争のどちらにより大きな影響を及ぼすのか。
実証研究の知見
『チェーン小売企業の出店戦略』(千倉書房)
本節では、小売業およびサービス業を対象に、チェーン企業のドミナント出店を実証的に検討した研究成果を概観する。
これに関連する実証研究は、①企業は集中出店を行うのか否かを問うものと、②ドミナント出店は成果にいかなる影響を及ぼすのかを問うものに大別される。
いずれの領域も、その主たる問題意識は、前章でレビューした競争的出店に関連する実証研究のそれと共通している。すなわち、同じ地域に自社店舗を密集させることで、集積の恩恵を享受できる一方で、自社店舗同士の競争激化、つまりカニバリゼーションが生じるという、この正負の側面を現実のデータから観察することを試みている。
さらに次項以降でレビューするように、これらの実証研究は、他社店舗との競争と自社店舗同士の競争のどちらがより成果に影響するのかを比較検討するものが多い。
そのため、競争的出店とドミナント出店の双方の理解に資する知見が提供されている。予めこれらの知見を要約すると、チェーン企業は特定地域における自社店舗密度(自社店舗数)を高める傾向が観察される一方で、ドミナント出店に伴うカニバリゼーションは、他社店舗との競争よりも成果を低下させる可能性があることが示唆される。
それでは、2つの研究群の知見を順にレビューしよう。






