2020年に人事制度を刷新、翌2021年からビジョン実現の土台となる風土醸成を目的に「心理的安全性の高い職場づくり」を推進しているサッポロビール。

 取り組み開始から現在に至るまでのプロセス、実際の施策にも触れながら、人財戦略の現在地と今後の構想を、同社人事総務部/組織開発プランニング・ディレクターの竹内利英氏が語った

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第4回 エンゲージメント&ワークプレイス改革フォーラム」における「特別講演:挑戦する意欲を引き出す人財マネジメント戦略~心理的安全性をベースにした職場づくりの現在地と未来~/竹内利英氏」(2025年6月に配信)をもとに制作しています。

管理職の仕事における「育成」を改めて重視

 サッポロビールは、2020年に人事制度の大きな改革をしており、最も大きな改革テーマは、それまで「評価制度」と呼んでいた制度を「育成評価制度」に改め、社員の成長・育成に主眼を置いた制度へ移行したことでした。

 管理職の仕事に、「メンバーの育成」という要素はもともと含まれていたものの、それまでは、どうしても個々の目標や業績にとらわれ、育成は後回しになりがちでした。そこで改めて、社員一人一人を育成し、成果を上げるチームをつくっていこうという方針を掲げました。

 育成についての最初の取り組みは、上司とメンバーが定期的に行う1on1について、その質の向上を支援することでした。

 それまで、1on1については、部署ごとに任意で行っており、必須ではありませんでした。しかし、育成評価制度の大きな施策の1つとして、1on1を最低でも月1回、30分以上行うことにしました。

 ただ、1on1はやり方を間違えると、形だけのものとなったり、かえって不信感や不満が募るといった逆効果を招いたりします。そのため、全社員に対して1on1を「何のためにやるのか」を丁寧に説明しながら、進めていきました。

 結果として、1on1を行う頻度が多い部署ほど、毎年行う評価に対する社員の納得度が高いという傾向が見られました。これ自体も良いことですし、これを、1on1を導入する大きなメリットとして、社員や所属長に明示できたことも良かったと思います。