撮影:榊水麗

 ファミリーマートは、店舗内の業務端末である「ストアコンピューター」(ストコン)を全店で刷新。2024年に導入を完了した。15年間同じ基本設計のシステムを使い続けた同社が挑んだ3年がかりのプロジェクトは、開始直後から計画の白紙撤回を迫られる波乱の展開に。当事者が振り返るプロジェクトの背景とメンバーの葛藤とは。

人手不足がコンビニの経営を直撃する

 コンビニ大手のファミリーマートは、2024年2月、全店舗で新しい「ストアコンピューター」(以下、ストコン)への移行を完了した。

 ストコンとは、通常各店舗のバックヤードに1台置かれている店舗運営のためのコンピューター端末で、本部と情報を連携するための役割を担う。通常は加盟店のオーナーが操作する端末である。「ストコンはオーナーが日々の売り上げを精算し、情報分析するために使います。店舗スタッフの管理もこれで行います。また欲しい商品発注をする重要な機能も備えています。会計、発注、勤怠など、店舗運営の全てを担うコンビニの心臓部といえる端末です」と、同社執行役員 システム本部 店舗システム部長の大泉政博氏は語る。

ファミリーマート 執行役員 システム本部 店舗システム部長の大泉政博氏

 同社のストコンは、2015年に入れ替えて以来同じ機器を使用していた。「しかもその時に入れ替えた機器は、その8年前の機器と同じ機能のまま動作環境だけを移行したものでした。実質的には、15年以上前に設計された機能を使い続けていたことになります」と、同社システム本部 店舗システム部副部長の河合孝治氏は話す。
 
 細かい改修は行われてきたものの、ストコンの基本的な機能は約15年間同じまま。その間にコンビニの運営を取り巻く環境は、当然のことながら大きく変化した。