ホンダの再使用型ロケット実験機。ⒸHONDA
民間企業によるロケット開発、人工衛星を利用した通信サービス、宇宙旅行など、大企業からベンチャー企業まで、世界のさまざまな企業が競争を繰り広げる宇宙産業。2040年には世界の市場規模が1兆ドルを超えるという予測もあり、成長期待がますます高まっている。本連載では、宇宙関連の著書が多数ある著述家、編集者の鈴木喜生氏が、今注目すべき世界の宇宙ビジネスの動向をタイムリーに解説する。
2025年6月、ホンダが再使用型ロケットの離着陸テストに初成功。2019年に始動したロケット開発が、その全貌を見せ始めた。ロボットや再生エネルギーも含め、ホンダが描く宇宙事業の戦略とは?
ぜいたくすぎるハイスペックロケット
2025年6月17日、本田技研工業の子会社である本田技術研究所(以下、ホンダ)が、自社で開発した再使用型ロケットの離着陸テストに初めて成功した。ホンダは宇宙関連技術の開発に関して多くを公表してこなかったため、この報告は驚きをもって受け止められた。
ホンダは宇宙関連事業として「遠隔操作ロボット」と「循環型再生エネルギーシステム」にも着手している。ホンダは今、宇宙に対してどのようにアプローチしつつあるのか。
今回の飛行テストでは、低高度での機体制御が確認された。低速で上昇した全長6mの単段式ロケットは、高度271.4mに到達し、目標地点に37cm以内の誤差で着陸した。飛行時間は56.6秒だった。
あくまでテスト機であるため、そのサイズは小さく、テスト内容も限定的だったが、この機体には非常にぜいたくなスペックが与えられていた。その最たる要素が、ターボポンプを持つ液体燃料ロケットエンジンだ。






