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リーダーが指示や鼓舞をしなくても、部下が自発的に動き、チームに活力と価値をもたらす――そんな仕組みは、どうしたら構築できるのか。『無言のリーダーシップ』(田尻望著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集。高付加価値を生み出すキーエンスで著者が学んだ、革新的なマネジメントの神髄に迫る。
リーダーの指示がなくても、メンバーが自ら動く「自走するチーム」。その仕組みを定着させ、成長する組織をつくるポイントとは?
「もうあなたがいなくても大丈夫です」の瞬間
『無言のリーダーシップ』(SBクリエイティブ)
――「無言」でもチームが勝手に成果を出すとは?
リーダーのNさんは、ある日の朝礼で不思議な光景を目にした。
いつものようにメンバーが集まり、短い連絡事項を共有して解散…となったが、その後、誰からもNさんに質問や確認が寄せられなかった。以前は「次どうすればいいですか?」「この方針で合っていますよね?」と必ず数人が駆け寄ってきていたのに、その日はみな、さっさと自分たちのタスクに取りかかり、同僚同士で進捗を確認している。
「おや、今日はずいぶん静かだな…?」
最初は少し戸惑いを覚えた。だが数週間経って、部下の一人がこう告げたのだ。
「Nさん、もう細かい指示を出してもらわなくても私たちは大丈夫ですよ」
胸に熱いものが込み上げてくるのを感じながら、Nさんは「ついに自分が不要になった瞬間」を実感した。もともとNさんは「無言のリーダーシップ」を目指し、仕組みを整え、部下を育成してきた。そのゴールがついに姿を現したのだ。
「無言で組織を動かす」という言葉だけを見ると、「放任主義で、リーダーはラクをしているだけでは?」と誤解されることが多い。しかし、前章までの学びを振り返ればわかるように、そこに至るまでには壮大な下準備が必要だ。






