写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 リーダーが指示や鼓舞をしなくても、部下が自発的に動き、チームに活力と価値をもたらす――そんな仕組みは、どうしたら構築できるのか。『無言のリーダーシップ』(田尻望著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集。高付加価値を生み出すキーエンスで著者が学んだ、革新的なマネジメントの神髄に迫る。

 部下に言いにくい話をするとき、前置きが長くなり要点を伝え損ねがちだ。そんな場面でも感情をうまくマネジメントし、的確に要点を伝える「リーダーのコミュニケーション」とは?

感情的混乱を生まない話し方

無言のリーダーシップ』(SBクリエイティブ

――言いにくい話ほど「結論」を先に

 リーダーのなかには、「まず背景や経緯を細かく理解してもらって、それが終わったら結論を伝える」という話し方をする人がいる。「結論から話せ」というビジネスルールはよく認知されているが、言いにくい話や入り組んだ話ほど、守りに入るため前置きが長くなりがちだ。

 しかし、結論が見えないまま話が進むと、聞き手は不安になって余計なことを考え始める。「何の話をしているの?」「要するに私はダメって言われるんじゃ?」とモヤモヤした疑問が生まれ、意図が伝わる前に感情的な抵抗が生まれてしまう。

 リーダーが意図的に“サスペンス風”に結論を引き延ばしているわけではないが、聞き手にとっては、ゴールがわからないまま聞かされる状態になる。言いにくい話をするとき、相手の感情を過度に揺さぶらず冷静なコミュニケーションをとるためには、「まず結論を伝える」という初心に返ることが実は有効だ。

――いつ感情を扱うべきか?

「結論を先に伝えるべき」と言われる一方で、「言いにくいことを伝えたあとの部下の感情は放置して大丈夫?」と迷うリーダーもいる。最もスムーズな順番は、「結論を話す→感情を聞く→背景や根拠をフォローする」だ。

 たとえば、リーダーが多忙な部下Cさんに新しい業務を頼みたいと思っていたとしよう。