組織やリーダーの能力に合わせてハードルの高さを設定することで、 成長を促す
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 どんなに優れた企業でも、環境変化に適応できなければ衰退は免れない。変化のスピードが増す現代では、組織はあっという間に古び、適応不全に陥ってしまう。その危機感こそが、多くの企業が変革に挑んできた理由だ。本連載では『なぜあの会社は、時代の変化に強いのか? 生き残る企業が持っている「変革の遺伝子」』(大池拓著/クロスメディア・パブリッシング)の一部を抜粋、再編集。著者が支援した400社の企業・組織で成果が実証された「実践的な組織改革の考え方」を紹介する。

 企業には多くの課題があるが、どこから着手すべきなのか? 優先順位、成果が上がりやすい課題の見極め方などについて解説する。

「適切な課題のサイズ」とは?

 課題を考えるときには、「自分の取り組みたい課題」ではなく、「企業として取り組むべき課題」を設定することが大切です。ただ、企業にはいくつもの課題があります。そのなかで、どの課題から取り組むべきなのか、優先順位をつけなければなりません。ここでは、そのときに注意すべきことを考えてみます。

 優先順位を決めるうえで重要なのは、個別の取り組みの影響だけを考えるのではなく、変革活動を通してどれだけ変革の効果を最大化できるかを踏まえ、「全体設計」を考えることです。

 全体設計に決まったルールはなく、企業・事業の状況や目指す目標によります。

 基準のひとつは、「解決しやすい課題」から取り組むこと。最初に取り組む課題が大き過ぎては、解決が困難を極め、変革のゴールまでの時間も膨大にかかってしまいます。「食べられる大きさ(バイトサイズ)」に課題を設定することが大切なのです。

 一方で、課題が小さ過ぎては、効果も小さくなってしまいます。

 そのため、まず課題の大きさを評価し、適切なサイズの課題から取り組みます。適切なサイズは、組織が解決できそうか否かと同時に、ストリームリーダー(個別の変革活動や改善活動を牽引するリーダー。第2回記事参照)がその課題解決に適した人材か否かも検討したうえで決定しましょう。組織とリーダー、両方の実行力と整合の取れた課題設定が重要です。一つひとつクリアしていくなかで、変革活動の勢いも生まれていきます。