©Walid Be写真提供:ZUMA Press/共同通信イメージズ
スマホやパソコン、家電、自動車など、生活に密着した機器の製造に不可欠な半導体。生成AI時代の到来でその重要性は増しており、米中覇権争いが熾烈(しれつ)を極める中、経済安全保障における最も重要な戦略物質と目されている。一方で、製品はメモリ、CPU(MPU)、センサーなど多種多様、多数のメーカーが製造工程ごとに世界中に点在しており、産業構造はあまり知られていないのが実態だろう。そこで本連載では、日本電気で一貫して半導体事業に携わった菊地正典氏の著書『教養としての「半導体」』(菊地正典著/日本実業出版社)から、内容の一部を抜粋・再編集。
今回は、台頭著しいファブレス企業とファウンドリーの相関関係を解説する。
工場をもたない「ファブレス企業」の躍進
■ 自分では製造しない「ファブレス企業」
ファブレス企業はEDAベンダーのツールを利用し、必要に応じてIPプロバイダーからIPを購入し、半導体の設計を行ないます。しかし、製造は自社では行なわず、ファウンドリー(前工程)やOSAT(後工程)の企業に委託します。
ファブレス企業が行なっている業務は、先に述べた大手IT企業のそれと似ているように見えるかもしれません。
では何が違っているかというと、それは開発する製品がファブレス企業の場合は自社向けと汎用性のある外販向けであるのに対し、大手IT企業の場合はもっぱら自社使用に特化した専用の半導体製品であり、外販はしないという点が大きく異なります。
■ 代表企業はエヌビディア、クアルコム
ファブレス企業の代表的メーカーをあげると、アームベースのCPUアーキテクチャやモバイルSOCを開発しているクアルコム(アメリカ)、無線用や通信インフラ用のチップのブロードコム(アメリカ)、GPUの巨人エヌビディア(アメリカ)、スマホ向けプロセッサのメディアテック(台湾)、プロセッサなどのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD:アメリカ)、アームアーキテクチャのSOCなどのハイシリコン(中国)、ネットワーク系SOCのマーベル・セミコンダクター(アメリカ)などの大手企業がありますが、ファブレス業界はIDMとは異なり、数多くのメーカーでひしめきあっています。






