画像提供:旭化成株式会社

 5年連続で「DX銘柄」に選定されるなど、デジタル先進企業としての地位を確立しつつある旭化成。同社はいかにしてDX化に向けた全社改革に取り組んできたのか。本連載では『人・データ・組織風土で奏でる 旭化成のデジタル共創戦略』(旭化成株式会社デジタル共創本部編/中央経済グループパブリッシング)から、内容の一部を抜粋・再編集。同社のDX史をひも解きながら、組織形成や人材育成など、企業に求められるDX戦略の在り方を探る。

 今回は、2018年の経済産業省「DXレポート」をきっかけに始まったいわゆるDXブームや、その後のコロナ禍の中において、旭化成がいかにしてDX化を進めていったのかを振り返る。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年7月25日)※内容は掲載当時のもの

⑸ DXブームの中で

 2018年に経済産業省が「DXレポート」を公表し、さらに2020年初頭からコロナ禍によりテレワークが急速に普及したことから、情報システム部門への期待はかつてないほど高まり、多くの企業でその存在感が増していました。旭化成でもそれは例外ではありませんでした。

 旭化成は、他の国内企業に先駆けて、2018年にはWeb会議システムの普及活動に着手しました。また、上司の出張時対応や資料管理の利便性を考慮して、稟議や署名のワークフローシステムも導入していたため、テレワークや働き方改革への対応を比較的スムーズに進めることができました。

 START Project終結直後の2018年には、次期基幹システムの検討が始まりました。経済産業省は「DXレポート」の中で、今のホストコンピューターを活用したシステム構造のままでは2025年には12兆円の経済損失が発生すると警告し、日本の企業競争力の再構築のためデジタルによる経営変革(DX)が必要であるとし、これをきっかけとしていわゆるDXブームが始まります。

 旭化成でも、NEXT projectで社内専用クラウドを活用していましたが、「2025年の壁」問題に早期に対処するため、新基幹システムへの移行が必要になりました。この移行にあたっては、デジタルデータをグループ内で広く簡単に利用できるようにする必要があることから、次の4点を大きな柱として、SAP S4/HANAへの移行を2018年末に機関決定しています。

  • IaaSに本格移行すること
  • 業務の標準化により、システムのシンプル化を進めること
  • 2000年以来刷新していない経理財務関連のシステムを刷新すること
  • 旭化成メディカルのシステムを旭化成のシステムに統合すること

 実際に、2023年度からの移行を目指して「CORE Project」としてプロジェクトを開始しました。