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次代の世界経済をけん引する存在として注目が集まるインド。同国のさまざまな分野で成功を収め、世界的にも影響力を持つリーダーたちを紹介しているのが、『インド発 世界を変える11のリーダーシップ』(Blume Ventures著、カド・インベストメント株式会社、重松秀樹訳/中央経済社)だ。同書の内容の一部を抜粋・再編集、インドで現在起きていることを把握できると同時に、ビジネスのヒントとなる内容を紹介する。
創業して20年足らずにもかかわらずインド最大手LCCにまで成長したインディゴ航空。同社のアディティア・ゴーシュ元社長が語るビジネス成功の秘策とは。
人的資本経営でインディゴ航空を成功に導いた
アディティア・ゴーシュが人を中心とした企業を築くための指針
『インド発 世界を変える11のリーダーシップ』(中央経済社)
“14万人”
これは、アディティア・ゴーシュがインディゴ航空61の社長として10年間の在任中に個人的に面接した人数です。
「私は皆さんの最大の労働組合リーダーです。」
彼はパイロットや客室乗務員たちにそう語りかけ、その言葉を心から信じていました。彼にとって、従業員の満足は航空業界における顧客体験そのものであり、たとえ些細な不満であっても見過ごすことはありませんでした。ホテルの水不足、タクシーの遅延、キャリーバッグの破損――どんな問題であっても、どんなときも耳を傾けてくれる人でした。
この “ハイタッチ” な人事アプローチのROI(投資対効果)は何だったのでしょうか? 答えは、彼のインディゴ在任期間終了後もなお残る “レガシー”です。
その証拠に、現在インディゴ航空はインド国内市場の60%以上を占め、過去5年間で収益は倍増、2024年12月時点で時価総額世界第3位の航空会社と位置づけられ、アディティアが築いた基盤は今もなお飛躍を続けています。
退任から数年経った今でもアディティアの影響力は消えていません。最近搭乗したフライト(インディゴではない)で、操縦士が彼に挨拶に来ました。操縦士はインディゴの元社員でした(9年半前にアディティアと面接したインディゴ財務部門のメンバーが乗客として搭乗しており、アディティアに気付いて操縦士に知らせたのです)。降機時に赤ん坊を抱えた操縦士が立ち寄り、「この子の母親とは、インディゴで出会いました。」と笑顔で語りました。
61 インドの最大手LCC(格安航空会社)。2006 年創業、国内線市場シェア約60%を誇り、急成長するインド航空市場のリーダー的存在。安定した運航と戦略的拡大により、アジア太平洋地域の主要航空会社となっている。








