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 劉備玄徳にとっての諸葛孔明、織田信長や豊臣秀吉にとっての黒田官兵衛――歴史上の傑出したリーダーの傍らにはいつも「参謀」がいた。現代のビジネスでも、優れた経営者ほど、他人の力を借りる大切さを知っている。本稿では『The参謀』(松本隆宏著/游藝舎)から内容の一部を抜粋・再編集。経営者を支える参謀の必要性を、さまざまな視点から説いてゆく。

 かつて法廷で、高等教育の知識に疎いことで揚げ足を取られかけた米自動車王ヘンリー・フォード。その時彼が切り返した“ある言葉”をヒントに、優れた経営者の条件について考察する。

なぜ、多くの経営者は「経営」を他人に習わないのか?

The参謀』(游藝舎)

 どんなジャンルにおいても、自分の持っていない知識を持つ先達が存在します。そして、人は何か新しいことを学んだり、自分の知識を深めたりするために、スキルや知識を持つ先生やコーチを頼る。これは、世間では当たり前に受け入れられています。

 しかし、なぜか経営については、「誰かに習う」ということをしません。考えてみると、これはとても不思議なことだと私は思います。

 私自身も経営者のはしくれとして常日頃思うのですが、会社を経営している人にとって経営判断やセンスは自分の最大の武器であり、常に磨きをかけるべきものです。今の知識やスキルにさらに磨きをかけるべく、他人から経営を教わる機会があってもよいはず

 なのに、多くの経営者の方は、ゴルフコーチのレッスンは受けても、経営のコーチを頼むという発想は持ちません。むしろ世の中には、我流で判断を行い、他人の意見を聞かない経営者が溢れています。

「ビジネスは人に教わるものではなく、経験値で学んでいくものだ。だから人から教わる必要はない」との反論もあるでしょう。

 ですが、会社員の場合、新入社員は上司や先輩から教わり、知識を共有してもらうのが常識です。また、いかにベテランの会社員であっても、研修などで最新知識をインプットするものです。

 社内の社員に向けては、さまざまな専門家を呼んで研修をして知識やスキルのアップデートを行うのに、なぜか自分の経営スキルをアップデートする経営者は非常に少ない。

 これには大きな矛盾を感じています。