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 従来、マーケティングにおいては「人は意識的にモノやサービスを選択している」という考え方が前提とされてきた。しかし実際には、人の意思決定の実に95%が「無意識」に行われるものであることが分かっており、顕在意識ではなく無意識に働きかけるマーケティング手法が注目され始めている。本稿では『「直感買い」のつくり方 記憶と連想の力で「つい選んでしまう」を促す』(レスリー・ゼイン著、木内さと子訳/翔泳社)から内容の一部を抜粋・再編集。消費者に「直感」で選ばれるためのメソッドについて解説する。

 かつて原料に関するネガティブな噂でイメージが落ち込んだマクドナルドを例に、消費者のマイナスイメージを取り除くための対策を考える。

マイナスの連想を排除することでブランドは救える

 2000年代の初め、マクドナルドのイメージは打撃を受けていた。

 2001年に出版されたエリック・シュローサー著『ファストフードが世界を食いつくす』(草思社)は、ファストフード企業の慣習や食品生産、職場環境の安全性、そしてアメリカ人の健康と社会への影響に厳しい目を向けた。

 モーガン・スパーロック監督による2004年のドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー』は、ファストフードが健康に与える影響、とりわけ、マクドナルドのメニューとそこにあるスーパーサイズセットに直接焦点を当てた。

 このような本と映画がつくられた背景には、当時の反企業的な風潮もあった。地産地消があらためて注目され、ファストフードは避けて街角のカフェや週末のファーマーズマーケットを利用しよう、という流れになっていたのだ。

 だが、何よりもマクドナルドのイメージに大きなマイナスの影響を与えたのが、同社のチキンナゲットとハンバーガーに使われている材料、そして「ピンクスライム肉」についておどろおどろしい映像が出回ったことである。

 そういった映像のうちのひとつには、風船ガムのようなピンク色のペースト状のものが、大きな蛇口から出てきて腸のように絞り出されているのが映っていた。この映像は多くの人に広まって話題になった。