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従来、マーケティングにおいては「人は意識的にモノやサービスを選択している」という考え方が前提とされてきた。しかし実際には、人の意思決定の実に95%が「無意識」に行われるものであることが分かっており、顕在意識ではなく無意識に働きかけるマーケティング手法が注目され始めている。本稿では『「直感買い」のつくり方』(レスリー・ゼイン著、木内さと子訳/翔泳社)から内容の一部を抜粋・再編集。消費者に「直感」で選ばれるためのメソッドについて解説する。
ブランドの独自性はいかにして生まれるのか。トロピカーナのデザインを例に、直感的な好印象を生み出すための条件を探る。
「独自性」とは具体的に何か
『「直感買い」のつくり方』(翔泳社)
完璧なオレンジを思い描いてみてほしい。鮮やかな色。丸いかたち。かすかな酸味と強い甘味の柑橘類の香り。自然。もぎたて。フロリダの最高品質。これをオレンジジュースのボトルに加えれば、視覚トリガーになる。
だが、売上ナンバーワンのオレンジジュースであるトロピカーナは、オレンジにちょっとした工夫を加え、強力な独自性を獲得した。赤と白のストライプのストローである。
ストローはオレンジにささっていて、そこから直接ジュースを飲めるかのように見える。まるで誰かがその完璧な完熟オレンジから果汁を飲みたくてたまらず待ちきれなかったかのように、ストローをオレンジに突き刺す動作が思い浮かぶ。
このデザインはただのオレンジではない。とはいえ、オレンジに別のものがたくさん加えられているわけでもない。シンプルでありながら、じつに多くのことを伝えている。
このデザインからは、プラスの連想があふれ出てくる。完璧なオレンジを連想させるだけでなく、完璧なオレンジジュースを連想させる。「最高の味」「間違いなく新鮮」「本物の果実」「もぎたて」「完熟状態で収穫」「加工されていない」といった連想だ。あらゆる効果的なグロース・トリガーと同様に、この認知の近道は、たくさんのプラスの連想とともに、このジュースが優れたものであるという印象をつくる。






