
2025年3月27日、JR東日本が再開発を進めてきた高輪ゲートウェイ駅直結の街「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」がまちびらきした。関東圏に張り巡らされた鉄道ネットワークを基に商業施設・不動産開発事業を展開するJR東日本。世界の主要都市が人や投資をいかに呼び込むか競争する中、同社はどのような商業施設や街を作ろうとしているのか。現ジェイアール東日本企画の専務取締役の竹島博行氏に話を聞いた。
※取材当時(2025.5.12)はJR東日本の執行役員マーケティング本部副本部長
駅でモノを売る原点は「駅弁」
――JR 東日本といえば、駅ビル・エキナカ事業の先駆者でもあります。鉄道駅を「商業施設」として捉えた場合、他の商業施設と比べてどのような強みがあると考えますか。
竹島博行氏(以下敬称略) 駅でモノを販売する原点は「駅弁」にあります。駅弁というのは外から中身が見えると売れないといわれています。電車に乗って、ふたを開けた瞬間にその地域ならではの食材が並んでいるのを見て「あっ」と驚く。言い方を変えると、お客さまは駅弁に「旅情」を求めているのです。このように駅ならではの顧客ニーズに向かい合ってきた歴史が当社にはあります。
鉄道駅は多くの会社員や学生が1日2回、週5日は利用する場所であり、その集客力は当然ながら大きな強みです。しかし、週に10回利用するということは、飽きられやすいということでもあります。
そのため、例えば「エキュート」では「52週マーチャンダイジング(MD)」により、毎週のように催事やポップアップストアなどで店舗の表情に変化をつけ、鮮度を保ち続けています。
駅ビルやエキナカ施設にとって最大の商機の一つは何だと思いますか? ホワイトデーなんです。男性はわざわざデパ地下で買い物するのは恥ずかしかったり、面倒だったりするものです。
こういったニーズは「52週MD」でさまざまなアプローチを試している中で気付いたことです。毎週のようにPDCAを回し続けながら新たな顧客ニーズを発見する。その経験の蓄積が当社の強みといえます。