発行枚数9000万枚のSuicaで顧客サービスの充実を図る
東日本旅客鉄道(JR東日本)は2020年6月、鉄道、バス、買い物などで利用できるSuicaと、複数の交通手段をシームレスにつなぐMaaS(=Mobility as a Service)、データマーケティングの3分野を統合して「MaaS・Suica推進本部」を設立した(*2022年6月22日よりマーケティング本部に再編)。
MaaS・Suica推進本部の次長である池澤茂氏は、同社の事業の変遷について、次のように語る。
「当社はご存じの通り鉄道事業からスタートし、駅ビル・エキナカの物販・飲食、ホテルなどの生活サービス事業を拡大させてきました。その中で、2001年11月にICカードのSuicaが誕生。現在、鉄道・バスでの交通利用エキナカ・マチナカ(市中)での電子マネーとしての利用と、生活の様々な場面で多くのお客さまにご利用いただいております。2006年1月にはモバイルSuicaが誕生、スマートフォンの普及と相まって、当社もビジネススタイルを変革してきました」
同社は東日本地域を受け持つ鉄道事業者でありながら、Suicaの発行枚数は約9000万枚にも達しており、電子マネー全体で見ても指折りの利用規模を誇る。また、モバイルSuicaの発行枚数は約1700万枚となっている。池澤氏は、モバイル会員をさらに増やし、新幹線を含む鉄道利用から買い物の決済までキャッシュレス化をさらに推進するとともに、スマホ1台でSuicaサービス、JR東日本アプリでのリアルタイムの運行情報等の提供や、MaaSサービスとの連携など、顧客サービスを充実させていきたいと話す。
Suicaが生み出すデータはまさにビッグデータである。しかし、これまでの同社は、鉄道、生活サービスなど同社グループ全体で生み出されたデータを十分に活かしきれてこなかったと池澤氏は言う。
「お客さまの立場でいうと、例えば、鉄道を利用してエキナカや駅ビルでお買い物をする際に、これはJR東日本の輸送サービスで、これは生活サービスということは意識せず横断的にご利用いただいているわけですので、サービスを提供するわれわれが、まさにお客さま視点でタッチポイントをつなぐ体制にする必要がありました。そこで、2年前に冒頭に述べた通りMaaS・Suica推進本部を発足させました」