
日本にコンビニが誕生して約半世紀。「コンビニ業界は大きな転換期を迎えている」と話すのは、法政大学名誉教授の小川孔輔氏だ。そうした転換期においてローソンは、他社が敬遠する立地にも積極的に出店し、独自のビジネスモデルを展開している。2025年4月、書籍『ローソン』(PHP)を出版した小川氏に、全国チェーンコンビニであるローソンがローカルビジネスに成功している要因や、アバター導入による多様な働き方の実現について聞いた。
「日本最北端の地」でローソンが盛況の理由
──著書『ローソン』では、同社が物流面や人員確保の課題を克服し、北海道稚内市への出店に成功したことに触れています。オープンから1年経過しても日販が同社平均5~6割増を記録しているとのことですが、盛況を続ける背景にはどのような成功要因があったのでしょうか。
小川孔輔氏(以下敬称略) ここでの成功要因には、ローソン独自の経営資源と会社の運営方式が関係しており、そこには「物流の効率化」「人材の確保」「カンパニー制の先行導入」「独自要因による差別化」という4つのポイントがありました。
1つ目の「物流の効率化」については、稚内市に4店舗を同時期に出店することで解決しました。従来のように1店舗ずつ出店用地を確保して、地元でオーナーを募集する形式では、稚内に配送する際に、1回の配送ではトラックを商品で満杯にすることができず、非効率が生じるためです。この点は全国展開するコンビニチェーン各社がクリアできずにいたため、稚内への出店を困難にする理由にもなっていました。
2つ目の「人材の確保」は、複数店舗を同時出店するために必要な店長やクルーをそろえることです。ローソンでは2009年より、複数店舗を経営するオーナーを企業家(アントレプレナー)として育成するためのプログラム「マネジメントオーナー(MO)制度」を運用しており、稚内への出店にあたってもMOとして活躍していた2名から協力を得ることで人材を確保していました。すでに道内で経営実績を持つ店長を稚内に派遣してもらうことで、成功の確度を高めることができたのです。
3つ目は、「カンパニー制の先行導入」です。コンビニの出店には、商品部、営業部、開発部の3つの部門の足並みを揃えることが欠かせません。そこでローソンは他地域に先行して北海道地区にカンパニー制を導入し、ほぼ全ての権限を本部から北海道カンパニーに移譲することで、スピーディーにプロジェクトを推進しました。
そして4つ目は「独自要因による差別化」です。